概説
頭板状筋は第7頚椎と後頭骨上項線の部位で受傷しやすいです。責任ある立場の人で労作性の損傷を起こしやすいです。責任ある仕事をする時に頭板状筋は緊張状態に置かれ、筋肉付着部で容易に損傷します。第7頚椎付着部の損傷後、組織化するため瘢痕を形成します。第7頚椎の部位に円形隆起が見られることがあります。一般的な治療法の効果は良くないですが、針刀療法では奏効します。
解剖
頭板状筋は上部胸椎と第7頚椎棘突起、項靭帯から起こり側頭骨の乳様突起後面に停止します。両側が同時に働くと頭頚部を伸展し、片側が働くと頚部を同側へ側屈し、頭部を同側へ回旋させます。
病因病理
頭板状筋の表層には僧帽筋、広背筋があり、深層には脊柱起立筋があり、頚部伸展の主要な筋肉の一つです。頭頚部の活動は第1胸椎が支点となり、第1胸椎自体の活動性は比較的少ないです。頭頚部が頻繁に多く活動する時に第7頚椎棘突起が応力の中心となります。このため、頭板状筋の第7頚椎の付着部は容易に損傷します。
頭板状筋の付着部が損傷後、頭頚部その他の筋活動が頭板状筋の回復に影響を与えます。筋腱部位を動かさないようにしても、筋腹は他の筋肉の活動下で活動を止めることは出来ません。そのため、頭板状筋損傷後、その修復と損傷は同時進行し、損傷部位の瘢痕組織は徐々に厚くなります。
臨床表現
患側の後頭骨下縁或いは第7頚椎棘突起の部位に疼痛があり、頚部の回旋、伸展に制限が生じます。また頚部にこわばりを感じます。温湿布を使い頸部を緩めても筋付着部は常時痛みを感じます。気候が変化する時に不快感が増悪します。
診断の根拠
1.外傷や労作性損傷の既往がある
2.第7頚椎棘突起の部位、或いは後頭骨下縁の片側又は両側の圧痛がある
3.掌で頚後部を圧迫すると頚部下の圧で頭が下がります。また患者に努力して頭を挙げるよう命じると痛みが増悪する。
治療理論
針刀医学による慢性軟部組織理論に基づくと、頭板状筋の頚椎下部と後頭骨下縁部位が損傷後、癒着、瘢痕、痙縮を発生させ、後頚部の動態平衡失調を引き起こし、上記の臨床症状を発生させます。慢性期の急性発作時、浮腫みから出た滲出液が末梢神経を刺激して臨床症状を増悪させます。このような理論を根拠に頭板状筋の起始部の癒着を解消し、瘢痕を剥離し、後頚部の動態平衡失調を回復させ、この病を根治させます。
治療方法
疼痛や圧痛が第7頚椎棘突起の部位にある時、疼痛部位或いは圧痛点の部位に針入します。針先と頚椎縦軸は平行にして針体と背平面を90~80度で刺入し、第7頚椎棘突起両側まで入れます。この時棘突起根部を超えないようにして神経や脊髄を損傷させないよう注意します。まず、棘突起尖部の両側に、頭板状筋の走行に沿って縦に剥離し、その後棘突起両側を数回削り、針を抜きます。
参考文献:朱汉章,针刀医学原理,人民卫生出版社:2002
野村嶬(監訳),骨格筋ハンドブック原書第3版,南江堂:2018