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北京堂鍼灸伊東

軟部組織損傷の臨床表現

軟部組織損傷の臨床表現
目次

疼痛

 疼痛は軟部組織損傷患者でよく見られる症状で、例えば頭頚部の軟部組織損傷で頭痛が引き起こされ、肩の軟部組織損傷で肩痛が引き起こされ、腰殿部の軟部組織損傷で腰部及び下肢痛が引き起こされます。天候の変化で特に寒さにより軟部組織病変の疼痛が増悪し、同時に寒さを受けることで軟部組織病変が治癒後に再発する主な要因となり、軟部組織損傷患者を診断する主な要因となります。

頚、肩、腰、下肢痛の原因はおおよそ4種類に分けられます。

1.脊柱骨関節の創傷と疾病:骨折、脱臼、結核、骨髄炎、腫瘍、リウマチなど。

2.外因性の頸、腰、下肢痛:包括的に内臓疾患で感染性疾患(上気道感染により頭頚部痛が発生、全身痛など)、及び精神的な要因で頚、腰、下肢痛を生じます。内臓疾患の中で頚、腰、下肢痛を伴うものは特に注意が必要です。診断の中で内臓疾患が引き起こす牽引痛や不快な痛みを除外します。例えば胃潰瘍の後、胃壁穿孔部、及び幽門部の腫瘍は後腹壁を刺激し、両肩甲骨間の痛みを引き起こします。肝臓、胆のう疾患は右側の肩背部痛を引き起こします。腎結石は陰嚢部或いは腰痛を引き起こします。肺結核は背部痛を引き起こします。肺尖部の腫瘍が胸壁に癒着する時、T1神経根を刺激する場合があり、腕神経叢に沿って放散痛があり前腕尺側まで続きます。

3.脊柱管の疾患:脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、脊柱管内腫瘍など

4.軟部組織自体の病変です。軟部組織は全身に分布し、異なる部位の軟部組織損傷は滅菌性炎症反応を引き起こし、病変部位の血流が障害します。一方では新鮮な血液、栄養物質が軟部組織病変部位に届かず、その傍ら産生して備えていた化学性刺激代謝産物は体外へ排出できず、病変した軟部組織の中に組織の腫脹が発生し、前者の物理的圧迫と牽引は末梢の感覚神経を刺激し軟部組織の痙攣産生疼痛を引き起こします。後者の科学的刺激は末梢の感覚神経を刺激して軟部組織の痙攣を産生し疼痛を発生します。

 これらの意義は、疼痛の性質はおおよそ疾患の性質に反映するということです。臨床でよく遭遇するズキズキする痛み、焼けるような痛み、電気が走るような痛み、この種の痛みは比較的近いですが、その病変の性質が各々異なるので、鑑別ができなかったら混沌とした状況になりやすいのです。

a)ズキズキした痛み:脊髄動脈の拍動時に短時間増悪します。多くは炎症後に発生し、過敏な末梢神経が組織の膨張圧力が有るところに、規律性或いは間隔性疼痛を産生します。疼痛は激烈で耐え忍ぶのも難しいほどです。後頭部に最も多く見られ、多くは大後頭神経、小後頭神経或いは血管に炎症があることで、よく見られるのは神経血管性頭痛です。

b)灼熱痛:灼熱痛は主に化学物質が受容体を刺激することで引き起こされます。痛みの部位は比較的浅く、トウガラシが皮膚に触れた後の熱い痛みに似ています。皮膚の火傷、日焼け、局所的な軟部組織の炎症性滲出なども灼熱痛を引き起こすことがあります。これらの疼痛は皮神経に侵害刺激が加わることで引き起こされます。

c)ピリピリした痛み:ピリピリした痛みは根性痛の表現です。神経根に刺激を受けて生じ、敏感な神経根は硬膜の摩擦を受け、衝突或いは周囲の組織が短時間に内圧が高くなり、咳やくしゃみで痛みを引き起こすことが多いです。

 伝統的な中医は疼痛に対して病因、病理に応じた分類があります。疼痛の性質に合わせて分刺痛、麻痛、跳脓样痛、裂痛、灼熱痛、饨痛、酸痛、抽掣痛、啄痛などがあります。その中で軟部組織損傷の臨床で密接に関係があるのは刺痛と麻痛です。刺痛は瘀血に多く、臨床治療ではよく刺絡の方法を行い、麻痛は血虚に多く治療は気血を補う方法で治療します。

機能障害

 軟部組織病変は疼痛以外に、よく軟部組織間の滅菌性炎症反応による軟部組織間或いは軟部組織と骨組織の癒着が出現します。局部の腫脹、牽引或いは圧迫により本来の活動範囲は制限されます。もしくは患者の疼痛閾値に変化が無く、制動されることを通して疼痛の保護機構が働くのです。

 要するに上記の原因はよく肢体の活動障害が起こるということです。例えば、肩関節周囲の軟部組織損傷は肩関節三つの運動軸で異なる程度の運動機能障害が出現し、例えば肩関節の挙上、伸展、肩で担ぎ挙げる動作などで制限されます。膝関節の軟部組織損傷では階段の上り下り、しゃがみ込み、起立動作障害が引き起こされます。機能障害の程度と範囲は、臨床では診断の材料となり、例えば棘上筋単独、或いは腱板の完全断裂すると、肩外転時に三角筋の収縮が見られますが、肩の外転は困難で力を入れるほど肩が隆起します。ただ開始30~60°が困難なのです。患者は往々にして疼痛により機能が制限され、残りの外転角度は正常なのです。もし患者の外転を介助してこの範囲の外へ到達したら、あとは三角筋が主として行う外転動作となります。肩関節外転60~90°の疼痛は肩峰下滑液包炎の特徴です。肩関節外転90~120°の疼痛は棘上筋損傷の疼痛の特徴です。肩関節外転120°以上の疼痛は広背筋損傷の疼痛の特徴です。機能障害もまた治療効果を評価する基準の一つであり、肩関節周囲炎の軟部組織は有効な治療の後、機能制限は徐々に減少し、これもまた治療効果を評価する重要な基準なのです。

 機能障害を診ることは臨床診断の中で一つの手段です。皆さんご存知のように、治療効果を得る主な要素は的確な診断です。では、的確な診断はどうしたらよいでしょうか?我々はまず「機能障害」を把握します。この特徴は、患者の機能障害が解決さえすれば、その軟部組織損傷も治療したことになるからです。
 運動学の中では一つの動作が起こるには、相対する筋肉の収縮が起こります。言い換えると、機能障害の動作や姿勢を見つけて、その動作で作用する筋肉を分析し、運動学の原理に基づき受傷した軟部組織を明らかにして、その後超微針刀を使いその治療を行うと、たちまち治療効果が現れるのです。例えば膝関節痛の患者を診る時、我々は患者に階段を上る時、下る時、どちらが痛いのかを聞きます。もし階段を上る時に膝が痛いなら、運動学に基づき、階段を上る時は主に大腿四頭筋が作用するので、大腿四頭筋を主に治療します。もし階段を下りる時に膝が痛いなら、膝蓋下脂肪体の疲労損傷かハムストリングスの損傷を疑います。例えば肘関節上方の疼痛の患者を診る時、物の両端に手をかけて持つ時に痛いのか、もしくはお湯を入れたポットを持つ時、タオルを絞る時、地面を掃く時の疼痛なのかです。物の両端に手をかけて持つ時の疼痛は上腕二頭筋を治療します。この時肘関節を半屈曲状態にして、上腕二頭筋の等張性収縮をしてもらい、静的にバランスを取れるかも確認します。地面を掃く時の痛みは上腕三頭筋を治療します。実は地面を掃く時、特に反対方向へ掃く時に肘関節はまっすぐ伸びる動作で、この時主に働くのが上腕三頭筋です。お湯を入れたポットを持つ時とタオルを絞る動作の疼痛は撓側手根伸筋を治療します。なぜなら、お湯を入れたポットを持つ時、ポットの重量に抗して終始、手関節伸展状態で、タオルを絞る時は手関節伸展の複合動作です。
 ですから、疾病の診断にあたって、我々が患者の何を解決するのか筋道を立てないといけません。もし疼痛、この一領域の推論だと、考える領域は広すぎます。以前の項で疼痛産生のメカニズムと原因について10個挙げ、分析は複雑で多いですが、「機能障害」この領域は運動学の知識を通して、我々が結果を出すことは容易です。当然、機能障害はその他の複雑な原因も含みます。例えば脳の病変で身体の半側に機能・運動障害を引き起こします。これは我々が鑑別する診断の中で推論する要素を付け加えないといけません。軟部組織損傷の中で、ただ機能障害を診断する道筋があれば良いという訳でなく、相当多くの患者に肢体麻痺という軟部組織損傷を生じる場合もあれば、機能障害が無いこともあり、別の手段をとります。
 例えば神経定位診断法は皮神経、運動神経の圧迫を分析し、その後、病因、病理、病位を結合し、神経定位の解剖学的分析を加え、明確な診断をします。

自律神経失調の症状

 軟部組織損傷病変の中で癒着、圧迫、滅菌性炎症刺激により、自律神経系が産生する相応の症状が引き起こされます。

1.頭部の軟部組織の病変:頭皮の肥厚感、頭部の腫れ、めまい、記憶力低下などの症状。

2.頚部の軟部組織病変:めまい、偏頭痛、落ち着かない、船に乗っているような感覚、霧視(目のかすみ)、視力低下、飛蚊症、ドライアイ、複視、難聴、耳鳴り、耳の付け根の痛み、耳の張り感、頬の痛み、心拍異常、高血圧、低血圧などの症状。

3.背部の軟部組織病変:前胸部痛、動悸、胸の締め付け感、呼吸困難感、息苦しい、背部の冷え、蟻走感などの症状。

4.腰部の軟部組織病変:悪心、嘔吐、噯気(げっぷ)、吃逆(しゃっくり)、腹部の張り、消化不良、食欲不振、腹痛、便秘、下痢などの腸機能異常、更に月経不順、生理痛、頻尿、失禁、EDなどの症状。

5.腰仙部の軟部組織及び股関節内転筋の病変:肛門痛、会陰部痛、陰嚢痛、陰嚢部の冷え、性交時痛などの症状。下肢の冷感や灼熱感などの症状を呈することもある。

臨床実践

 ある統計では、軟部組織の病変が引き起こすこれらの症状は120余りと言われ、このような自律神経失調症の存在は、軟部組織の診断に一定の困難をもたらし、軟部組織業編の患者の一部はよく内科、外科、婦人科、神経科などの科の中で入り乱れて、医者は症状に注意して治療するだけで、深い根拠も無いと往々にして誤診され、科の中で治りにくい病気として扱われるのです。臨床の中で軟部組織の病変が治癒すると、その自律神経の失調もそれに伴い軽減するか消失します。超微針刀による内科疾患の治療は上記に記した根拠によるものです。

おわりに

 治療家は1人の患者に対するサービスの時間は限りがあります。鍼灸師だと問診、刺鍼、置き鍼、抜鍼で、整形外科のクリニックに従事している療法士は1単位20分の所が多いと思います。どのようにして効率よく問題組織を探せるか、ということが最終的に結果に繋がります。
鍼灸師は養成校で、どういった動作でどのような筋の働きがあるか、というのはあまり学んでいないと思います。「どういった姿勢や動きでどういう筋が働くのか」といった事を基本的な部分だけでも知っておくと、評価ー治療が効率的になり、治療の精度も上がります。

上記内容は、どう評価するかという点で役に立つ内容ではないかと思います。

参考文献:胡超伟,超微针刀疗法,湖北科学技术出版社:2014

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