解剖
撓側手根伸筋は前腕の背側、撓側にあります(図参照)。前腕の伸筋群は合わせて10個あり、浅層と深層の2層に分けられます。撓側から尺側へ向かい、長橈側手根伸筋、短撓側手根伸筋、指伸筋、尺側手根伸筋があります。この5つの筋肉は上腕骨の外側上顆から起こります。手関節伸筋の3つは中手骨に停止します。指伸筋は下方に移行すると4つの長い腱になり、それぞれ第2指~5指の指背腱膜に付着し、さらに中節骨と末節骨に停止します。
深層には5つの筋肉があり、撓側から尺側へ向かい回外筋、長母指外転筋、短母指伸筋、長母指伸筋、示指伸筋があります。この5つの筋肉は回外筋以外は上腕骨外側上顆から起こり、橈骨前外側面に停止します。回外筋以外の4筋は尺骨と橈骨の背面から始まり、それぞれの末節骨、基節骨に停止します。
病因病理
1)この疾患は長時間の過度な反復する前腕や手関節を使った作業により、労作性損傷、水腫、滲出、線維変性、癒着などの軟部組織損傷が引き起こされます。
2)解剖の位置関係から説明すると、前腕の撓側下1/3の所に、長母指外転筋と短母指伸筋が撓側にあり、撓側手根伸筋腱の上を斜めに跨いでいます。この部位に腱鞘は無く、ただ一つの柔らかい腱膜に覆われています。伸筋の頻繁な活動がある、腱鞘の保護が無い、といったことにより容易に腱鞘及びその周囲の損傷が起こります。
臨床表現
1)前腕中下部の背側の腫脹(腫れ)、疼痛、手関節屈伸運動時に疼痛が増悪する。
2)手関節背側横紋上3~4指の所に圧痛や押さえると腫れた筋腹がある。
3)病変部位の皮膚は発赤があり、皮膚の温度は高く、手関節屈伸の時に明らかな摩擦音や痛みを伴う。
診断
1)発病は比較的早く、多くは利き手に発生する。明らかな上肢、手関節部の労作性損傷の既往がある。
2)前腕中下部の背面撓側に腫脹、疼痛、明らかな圧痛があり、押さえると疼痛と共に紐のような触感の組織がある。局部の皮膚は赤くなり、皮膚の温度は高い。
3)こぶしを握る、手関節伸展時に、腫れた筋肉間で相互の摩擦音を感じることがある。
治療
1)治療部位
a:上腕骨外側上顆の疼痛性結節がある部位
b;横手根靭帯背側を伸ばし、尺骨茎状突起の撓側縁
2)操作
患者はベッド上に仰臥位となり、治療部位を露出する。通常の消毒を行い、上記の治療法を行います。刺針深度は0.3cmで、筋膜結節を切り、術後は綿球で1分間圧迫する。
参考文献:
森 於莵 他,分担解剖学1,金原出版:1982
胡超伟,超微针刀疗法,湖北科学技术出版社:2014