解剖
第1頚椎は環椎とも呼ばれ、これは前後弓と両側の外側塊から構成されます(図参照)。
前弓は比較的短く、その中央の後方(裏側)に軸椎との関節面である歯突起窩があり、環軸関節を構成しています。前弓前面の中央に結節があり、ここは両側の頚長筋が付着しています。後弓は比較的長く、その中央に棘突起は無く、両側の小後頭直筋がこの結節に付着し、後弓上面の両側近位部に椎骨動脈溝という溝があり、椎骨動脈が横突孔から出た後、両側の外側塊に巻き付き、この溝を通り、後頭筋膜へ入ります。大後頭孔に入り、頭蓋腔中へ入ります。両側にある楕円形の陥凹した関節面は、後頭骨の後頭顆と環椎後頭関節を構成します。
第1頚椎横突起は全ての頚椎横突起の中で最も長く、その横突起先端の上部に上頭斜筋が停止し、下部には下頭斜筋の起始部があります。上頭斜筋は大後頭直筋の少し上方で後頭骨に停止します。下頭斜筋は第2頚椎棘突起に停止します。横突起の前部から外側頭直筋が起こり、この筋は後上方へ向かい後頭骨の頸静脈突起下面に停止します。
※環椎横突起に付着する筋:上頭斜筋、下頭斜筋、外側頭直筋
病因病理
1)長期間、顔を上に向ける、下に向ける作業をしていると、この部位の労作性損傷を引き起こしやすく、引き起こした後は組織が硬化します。
2)長時間、片側に頭部を伸ばすといった悪い習慣は、付着部の筋肉の労作性損傷を引き起こす主な原因になります。適切でない頭部の位置でテレビを見たり、画面が目の前に無い状態でパソコンを長時間行うことも原因となります。
3)頚部疾患の手技治療を行う時、乱暴な手技、或いは不適切な力で行うと、この部位の筋肉の損傷を引き起こすことがあります。
4)長期間、高い枕で睡眠をとると、付着部の筋の労作性損傷を引き起こすことがあります。
臨床表現
1)頚部のこわばり、一側或いは両側後頭骨の下項線外側の痛み。
2)めまい、太陽穴の痛み、片側顔面部の痛みや張り感、重度な場合は眼球突出、明らかに腫れた下まぶた。
3)顎関節の痛み、開口或いは食べ物を咀嚼する時に痛みが増悪します。
4)耳鳴り或いは難聴は耳を無理に持ち上げると一時的に症状が軽快しますが、しばらくすると症状が再発します。
5)顔面の麻痺、痙攣、痛み、しびれを生じることがあります。
6)三叉神経痛、歯痛などの症状がある場合があります。
診断
1)めまい、片側顔面の痛み、前額(ひたい)或いは目の不快感
2)頚部伸展抵抗テスト陽性
3)第一頚椎横突起先端を押すと、疼痛を伴う結節がある、下項線外側の骨面を圧すると疼痛を伴う結節がある。第二頚椎棘突起の傍に疼痛を伴う結節がある。
治療
治療点
a点:第一頚椎横突起先端、胸鎖乳突筋後縁、風池穴から外下方約1cmの部位。
b点:第二頚椎棘突起傍の疼痛を伴う結節点。
画像で分かるように、真後ろから見ると環椎の横突起が大きく突き出ているのが分かると思います。右図の刺鍼部位は正中側から風池、風池から外側1cm、完骨です。後頭骨の下縁から下方へ斜めに刺鍼すると環椎の横突起に当たります。
参考文献:胡超伟,超微针刀疗法,湖北科学技术出版社:2014