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北京堂鍼灸伊東

慢性軟部組織損傷の根本原因

慢性軟部組織損傷の根本原因
目次

概説

 いかなる疾病の発生、発展にも確かな解剖形態学の基礎があります。各種の原因は人体が関係する弓弦力学体系、解剖構造の形態変化により引き起こされ皆、弓弦力学体系の動態平衡失調を引き起こします。従って慢性軟部組織損傷疾病が発生します。著者はこの種の関係を「不正不平」「不平則病」と帰結しました。

不正の定義

各種発症させる要素は例えば暴力損傷、疲労性損傷、隠蔽性損傷、感情性損傷などで、関係する弓弦力学体系の力を受けて異常を引き起こし、最終的には弓弦力学体系の構成する部分(骨と軟部組織)の形態構成変化、正常位置からの逸脱をきたすので「不正」と呼びます。人体弓弦力学体系は三つの部分から構成され、それは四肢関節弓弦力学体系、脊椎弓弦力学体系、脊椎ー四肢弓弦力学体系であり、それら不正の表現するタイプもまったく異なるのです。

1.軟部組織の形態構成変化:弓弦接合部(軟部組織が骨面付着部にある)及び弦の経由するライン(関節包、靭帯、筋膜、筋肉など軟部組織走行のライン)の癒着、瘢痕、痙縮、硬結、線維化、硬化、カルシウム化などのことをいいます。

2.四肢関節弓弦力学体系は主に四肢関節の力学伝導に関わり、ゆえにその受傷後の形態学の変化は四肢関節の僅かなずれ、骨質増殖を伴い、重症の場合は関節変形を伴います。

3.脊柱弓弦力学体系は主に脊柱力学伝導に関わり、ゆえにその損傷後の形態学の変化は脊柱の生理的彎曲変化により、脊柱各関節の矢状面、前額面、水平面で単一あるいは多方向のずれとして現れ、骨質増殖や椎間板の転移を伴います。

4.脊柱ー四肢弓弦力学体系は主に脊柱と四肢の力学伝導に関わり、ゆえに受傷後の形態学の変化は以下のように現れます。一つは脊柱弓弦力学体系受傷後の形態学変化、二つ目は四肢と弓弦力学体系受傷後の形態学の変化です。例えば強直性脊椎炎、関節リウマチ、捻転性筋緊張障害などの疾病の関節変形が該当します。
 以上、解剖構造の形態学の変化は臨床上、物理検査(画像検査、顕微鏡)により分かります。

不平の定義

 弓弦力学体系の形態構造異常(不正)は慢性軟部組織損傷の根本原因です。しかし、人体は巨大な自己修復と自己調節の潜在能力を持っています。従って不正の状況では受傷した軟部組織と骨関節の機能が一定限度内であれば、付近その他の軟部組織や骨関節が代償できます。ゆえにこの時は臨床症状と身体の異変が軽微であっても臨床表現は見られません。言い換えると弓弦力学体系の形態構造が異常であっても、仮に軟部組織が癒着、瘢痕、痙縮、硬結、線維化、硬化、カルシウム化や骨関節のずれがあったとしても、これらの形態構造異常が人体の代償範囲内であったら、臨床表現はみられないか、軽微な症状があるだけです。
 弓弦力学体系の形態構造異常(不正)が人体の自己修復と自己調節機能の限界を超える時、人体の力学的平衡は崩れ、たちまち軟部組織と骨関節の機能異常を引き起こします。或いは軟部組織間の神経、血管を圧迫する過程で各種の複雑な症状と身体の異変を引き起こします。この種の弓弦力学体系の形態構造異常(不正)により、弓弦力学体系の機能障害が受傷することを引き起こし、人体の平衡失調も引き起こします。これを不平といいます。
 人体の弓弦力学体系の構成は異なりますので、その力学的平衡失調の臨床表現もまた異なるのです。

1.軟部組織損傷後、機能異常の臨床表現は局部疼痛、腫脹、圧痛、硬結、線維化、硬化、機能障害などがあります。例えば上腕二頭筋の弓弦力学ユニットが受傷すると弦結合部(上腕二頭筋長頭、短頭の起始部)の筋腱が癒着、線維化、硬化、カルシウム化が上腕二頭筋長頭腱炎や上腕二頭筋短頭筋腱炎などの臨床表現を引き起こします。

2.四肢関節の弓弦力学体系受傷後に関節の腫脹・疼痛、活動制限、(重症な場合)関節変形、関節機能喪失といった機能障害をきたします。例えば、膝関節の弓弦力学体系受傷による膝関節の骨性関節炎は膝関節及び周囲の軟部組織の正常構造と隣接する関係が変化し、膝関節の腫れ、疼痛、歩行困難、関節浸出液貯留などを引き起こし、最終的には膝関節の変形をきたします。

3.脊柱の弓弦力学体系受傷後の機能異常は、脊柱周囲の軟部組織損傷後の臨床表現として現れます。仮にこれらの部位の軟部組織の神経、血管が持続的に圧迫されると数多くの複雑な臨床表現が現れます。例えば、頚部の弓弦力学体系受傷による頚椎病は、頚部の骨関節及び軟部組織の正常構造と隣接する関係が変化し、まず頚部のだるい痛みを引き起こし、頚部の活動が制限され、頚部の神経、血管が圧迫された時に神経根性頚椎病、椎骨動脈型頚椎病、交感神経型頚椎病、脊髄型頚椎病などを引き起こします。
 更に脊柱弓弦力学体系による慢性気管支炎では、頚椎胸椎移行部が頚部脊柱の弓弦力学体系の弦結合部であったら、また胸部脊柱弦力学体系の弦結合部であったら、この部位に数多くの軟部組織の付着があり、受傷しやすく頚、胸部脊柱の形態変化を引き起こします。一方、肺を支配する胸椎前側方を通る自律神経に影響を与え、一方で胸腔の容積が変わり最終的に気管支と肺の機能異常を引き起こし、臨床表現として慢性咳嗽、喀痰、喘息、呼吸困難、肺機能異常をきたします。

4.脊柱ー四肢の弦力学体系受傷後の機能異常表現
一つは脊柱弓弦力学体系受傷後の機能異常の症状である体の異変で、二つ目は四肢弓弦力学体系受傷後の機能異常である体の異変です。例えば強直性脊椎炎は初期に腰仙部の朝のこわばり、筋肉痛、腰痛といった症状があり、後期に脊柱強直、股関節強直、肩肘関節強直、膝関節強直など脊椎弓弦力学体系受傷と四肢弓弦力学体系受傷の臨床表現が現れます。

結論

今まで述べたことを総合すると以下のような結論となります。

1.弓弦力学体系の形態構造の変化(不正)は慢性軟部組織損傷、骨質増殖及び各内臓器官の慢性損傷による物質的基礎を発生させ、この種の形態変化が人体の自己代謝能力や自己修復能力を超える時、弦(軟部組織)間の神経、血管の経路は圧迫され、人体の力学的平衡は破綻(不平)し、各種の複雑な症状や反応を引き起こします。
人体が環境、気候、情緒、損傷に対して引き起こす慢性軟部組織損傷の自己修復能力と自己調節は各々異なるため、各弓弦力学体系の形態学の変化と機能学の変化も異なります。則ち、慢性軟部組織損傷の臨床表現と画像所見の表現に複雑な根本原因があるのです。

2.骨質増殖は骨格自体の退行変性やカルシウム不足の結果ではなく、慢性軟部組織損傷が骨関節にある特殊な表現形です。

3.不正と不平の関係ですが、不正は原因であり、不平は不正の一つの結果です。不正は必然ではなく不平を引き起こします。もし、弓弦力学体系の受損が軽微であったら、人体の自己代償能力と自己修復能力の方が勝るので臨床表現を引き起こすことはありません。反対に弓弦力学体系の受損が大きかったら、人体の自己代償能力と自己修復能力の方が弱いため、各種の臨床表現を引き起こします。すなわち、不平不正の状況であると外力として針刀などの調節を加えることが必要になります。

4.弓弦力学体系の形態変化は骨質自体(弓)がそのようにする訳ではなく、骨関節周囲の軟部組織(弦)の力学的平衡失調によるもので、慢性軟部組織損傷後の臨床表現は人体が弓弦力学体系を受損して代償しきれないためなのです。針治療は不正不平、不平則病に対してで、針刀治療の目的は平準化するよう正すことであり、弓弦力学体系の異常を是正し、神経や血管の圧迫を解除し、人体の自己修復能力と自己調節能力を回復することなのです。

参考文献
吴绪平,针刀医学临床研究,中国中医药出版社:2011

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