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動態平衡失調と四大病理要素の関係

動態平衡失調と四大病理要素の関係
目次

概説

 動態平衡失調は慢性軟部組織損傷の病因病理に対して行う全体的な概要と把握であり、その最も根本的かつ最初の病因です。なぜなら著者がこの類の慢性軟部組織損傷を治療しても、動態平衡が回復すれば、その疾患は根本的に治療できるからです。動態平衡失調を引き起こす病理学的要素は癒着、瘢痕、痙縮、閉塞の4つがあります。動態平衡を回復させたい場合は、まずこれら4つの病理学的要素を除去する必要があります。

 これまでいくつかの項の論述を通して、様々な軟部組織損傷の主な原因は4つの主要な病理学的要素により引き起こされる人体の動態平衡の不調であることが理解できました。これから述べるのはいかに4大病理要素を取り去り人体の動的平衡を回復させるかです。

 様々な慢性軟部組織損傷疾患に広く存在する4大病理要素とそれらを除去する方法(つまり治療法)について説明しましたが、著者はいくつかの慢性軟部組織疾患の具体的な種類について詳細な研究を行いました。次にその内容を説明します。

疾患、組織と四大病理要素

1.第3腰椎横突起症候群:「症候群」と一言で言っても、この疾患には関係する多くの組織と大系が含まれており、病理メカニズムは極めて複雑です。著者の研究によるとこの疾患の病理メカニズムはとても簡単で腰背筋膜や仙棘筋、第3腰椎横突起尖部が慢性的に摩擦損傷或いは急性摩擦損傷、出血、組織化、癒着により、腰部の屈伸する時に第3腰椎横突起が引張られ、自由に動けなくなり、腰背筋膜と仙棘筋を保護するための疼痛が生じるのです。
針刀を使い第3腰椎横突起尖部を剥離し緩めると、この箇所の骨肉癒着がはがれて、筋肉はほぐれて、往々にしてたちまち症状が消失し、この内外の動態平衡は回復し、一度苦労すれば後は末永く楽になるのです。この疾病の治癒過程は上記のように実証されました。

2.上腕骨外側上顆炎、大腿骨内側顆炎など: 上腕骨外側上顆炎、大腿骨内側顆炎と呼ばれるものは、無菌性炎症を指します。上腕骨外側上顆炎の第一の病理要素は何でしょうか?尺側手根伸筋の上腕骨外側上顆への付着部が緊張して出血したり、組織化して傷がついたり、或いは腕橈骨筋腱の摩擦や労作性損傷により出血、組織化、癒着、結節が起こり、関係する神経や血管が圧迫され、上肢の活動制限を引き起こし、局部を保護するため痙攣疼痛が起こり、長期化すると上腕骨外側上顆の瘢痕部位に硬いカルシウム化したエッジが出現する場合があります。
この病理の認識により、針刀で癒着を剥離し、削り、神経血管束を切断し満足する治療効果を得て、上肢の様々な活動、機能は完全に回復します。更に一歩進み上記の上腕骨外側上顆炎の病理メカニズムの観点で客観的に実際的に適合するものとなりました。
 大腿骨内側顆炎に関しても同様の道理です。膝の内側側副靭帯と大腿骨の内側顆は癒着を引き起こします。
上腕骨外側上顆や大腿骨内側顆及び関節周囲の骨突出部、比較的頑固な疾患、その病理要素は皆癒着を引き起こし、機能活動に影響を与えます。針刀医学の応用は更にこの点を証明しました。

3.滑膜炎、腱鞘炎などの疾患:滑液包炎や腱鞘炎の発病要素は、損傷により発生する結節や痙縮が滑液包の閉鎖と腱鞘狭窄を引き起こし、炎症性滲出もまた継続的にあります。針刀で関節包を数箇所切開し、腱鞘を切開しほぐすと、早くに症状が軽快しこの疾患は治癒し、内部の流体的動態平衡は回復します。また、実際の病理要素は結節と痙縮であり、炎症が主な病因要素ではないことも強く示しています。

4.腸の癒着などの疾患:腸の癒着とは、開腹手術後の修復過程で腹膜と手術創が癒着してしまい、腸の蠕動運動が制限され、症状が取れない難治性の腹痛を引き起こすことが多い病気です。著者は針刀を使い癒着部位(腹壁を持ち上げた時に痛みを感じる部位が癒着部位)を見つけて、腹壁を貫通し針刀を165°傾斜させ腹壁下の癒着部位を剥がします。この病気を根本的に治療することができ、腸の蠕動運動を正常に戻す、つまり腸の動態平衡を回復することが出来ます。

5.閉塞性脈管炎など:様々な異なる原因で損傷された血管内部は、血管内壁が増殖し血流が閉塞し、血管上流が膨張し、血管は少しずつ損傷し、炎症反応を産生します。著者は回旋型針刀を使い、血管腔に沿って刺入し、閉塞部位に到達すると針刀を回旋し閉塞部位の流れを良くして、抜針後、しばらく刺鍼部位を圧迫すると、血流は正常に回復し、流体的な動態平衡が回復し、この疾患は根本的な治療となるのです。

6.前立腺炎など:この疾患は微小血管と筋線維が長期にわたる負荷で断裂し、修復過程の中で結節、癒着、閉塞などの新しい病理要素を産生し、前立腺の正常な収縮と弛緩の機能を障害し、少しずつ尿道と精管が狭窄し、前立腺の生理機能障害が発生します。著者は針刀を経皮的に刺入し前立腺に到達すると縦に深層を剥離し前立腺の組織を緩めて、様々な機能を回復し、前立腺の弛緩と収縮の動態平衡が回復するのです。

結論

 上記に述べた全6種類の慢性軟部組織損傷疾患の中で明確に理解しているのは、癒着、瘢痕、痙縮、閉塞が動態平衡失調の主な病理要素で、この四大病理要素を取り去ることさえすれば、人体内部・外部の流体的動態平衡は回復し、慢性軟部組織損傷疾患もまた根本的に治療でき、四大病理要素と動態平衡失調の理論は慢性軟部組織損傷の本質を暴き、重い疾患の奥義となり人類健康の危機を救うでしょう。

おわりに

 上記の内容から、中国では針刀を使い整形外科疾患だけでなく消化器外科や循環器、泌尿器科など様々な分野で軟部組織の治療をしていることが分かります。近年では国内でも内視鏡を使い、低侵襲で手術が出来るようになりました。しかしこの針刀は内視鏡より細いので更に低侵襲で問題解決できる可能性が高いです。
改めて軟部組織の問題というのは全身に深く関わるものであると理解できたのではないでしょうか。

参考文献:朱汉章,针刀医学原理,人民卫生出版社:2002

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