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北京堂鍼灸伊東

第1章 西洋医学の困惑

西洋医学の困惑
目次

歴史的背景

 16世紀の西洋ルネサンス時代に、各国の思想が非常に活発となり、西洋思想文学の最高の成果である西洋哲学理論体系が形成されました。代表的な西洋哲学は数理哲学とも呼ばれ、この哲学を創始した思想家はいずれも自然科学者(ニュートン、ガリレオ、デカルトなどは哲学体系の創始者に含む)であり、同時に著名な物理学者、天文学者、数学者です。この理論体系の典型的な特徴は、形象思考モデルが主導する思想体系で、科学、文化、芸術、政治などに直接影響を与え、西洋文化を前例のない発展をさせたことです。

 このような歴史的背景の中で、西洋医学は徐々に独自の体系を形成していき、イギリスの著名な医学者であるハーヴェイが人間の循環器系を初めて発見し、それほど時間が経たない内に相次いで神経系、リンパ系、泌尿器系、呼吸器系などの一連の治療法を形作りました。内科ではペニシリンに代表される抗生物質の応用とホルモンの発見と応用により、有力な治療法が発明され、外科では麻酔技術と無菌技術の応用に成功し、外科治療技術は操作可能な段階に入りました。

 西洋医学の中で、外科の基礎理論の基礎を定めたことは、西洋医学にとってこの数百年の発展の過程の中で輝かしい業績となりました。

現状

 西洋医学が目覚ましい発展を遂げるにつれて、次第に多くの解決が難しい状況が明るみに出るという矛盾が生じました。

1.内科分野
 抗生物質は古くから広く使われており、薬剤耐性が増し、副作用も増加しています。例えば、ペニシリンが投与された当時は成人に対し20万単位で済みましたが、現在では800~1000万単位必要となり、それでも解決できない場合もあります。ホルモン類の薬物はその重い副作用を冠して「諸刃の剣」という名もあり、更には先進国の病人はホルモンの色素変化に関する議論が盛んであり、一般状況下でこの類の薬品の使用は拒絶されています。この100年、科学の研究が絶え間なく深化し、化学薬品が人類にもたらした後遺症は非常に深刻的であることが徐々に判明し、そこで西洋医学の専門家たちにお聞きしたい、医学は何処へ向かうべきでしょうか?

2.外科分野
 過去200年にわたり、西洋医学は外科分野で急速な発展を遂げ、脳外科、心臓外科、肝臓外科、臓器移植など、かつて生命のタブーといわれていた領域に手術ができるようになりました。しかし、外科手術がもたらす不可逆的な後遺症と合併症は、外科の専門家たちを非常に悩ませました。専門家の統計によると、外科手術の合併症や後遺症の発生率は78%に達しており、この高さに比例して失望した人がいます。このことで多くの患者が一般に外科手術を拒否し、病気の治療に非外科的治療を希望しています。

3.現代西洋医学の分野では、あらゆる西洋医学の診療技術を用いても、一部の疾病は真の病因が解明されておらず、有効な治療法がありません。一部にはいわゆる不治の病がまだ残っています。事実、これらの不治の病の中で大きな一部分が治療できるものであり、僅かに、この病因がはっきりしないものがあるので、これら不治の病の病因を解明しなければなりません。現有する思考方法では解決方法が無いと言われており、東洋と西洋の思考を組み合わせた思考方法を結合してこそ、これらの病因を見つけることができます。これらの病因が解明されれば、いわゆる不治の病は治る病気になります。

 現代文明の高度な発展により、人類が疾病の治療に対する水準の要求は益々高くなり、疾病の治癒を要求するだけでなく、治療の時に後遺症や合併症を伴わないことを求めています。患者は病気になる以前の水準に機能が回復することを望んでおり、甚だしきに至っては、体表に何の痕跡も残さないようにと要求し、これは美的な目的を達したいという理由からです。

 以上が現状であり、現代医学に対して突きつけられた巨大な難題です。西洋医学の専門家は長期にわたる研究の中で、人類の将来的な治療方法は必然的に物理療法が主になると考えています。化学薬品の抗薬性、副作用、外科手術の後遺症と合併症から逃れることは出来ないからです。しかし、これらの努力は僅かな効果しかなく、更には翻って伝統的な医学領域に活路を求めます。このため、WHOは伝統的医学班を結成し、世界各国の伝統医学の技術開発に責任を負いましたが、彼らは重大な障害に直面しています。則ち各国の伝統医学は現代科学に含まれるものは乏しかったのです。

可能性

 現代文明の急速な変化により地球は”小さく”なり、時間と空間の相対的な距離が短くなったことで、私たちは西洋と東洋の文化を一つに集めて問題を考え、一つの西洋の文化的な枠から飛び出すことが出来るようになりました。医学の中でも人々は西洋医学の枠から飛び出して問題を考えることが可能になったのです。例えば私たちは地球の何処にでも電話してアイデアを交換し、状況を把握することができ、テレビを点ければ地球上のどこで何をしているのか、どのようにするのか一目で状況を確認できます。もし、私たちが地球の裏側へ行く必要があったら、飛行機に十数時間乗り、やっと到着します。このことは私たちに全世界の科学文化の動態を把握し、客観的な条件を提供します。医学においても私たちは常に全人類が医療衛生で必要とする実際の状況を充分把握することができ、東西医学の異なる特徴である、それらの優劣を把握し、特に東洋医学の代表である中医学は、西洋医学には及ばない多くの利点があります。このようにして、東洋医学の利点を生かして西洋医学の欠点を補うことも可能です。

現実性

 西洋医学が全世界に普及することで、中国人は西洋医学の基本理論と医療技術を応用することが現実になり、全面的に掌握しました。この100年の臨床実践、深い研究の全体を通して、中国人は西洋医学に対してすでに詳知していますが、西洋人は東洋医学に対してどちらかといえば、認識が少ないです。東洋医学の代表である中医学は中国人の祖先が2000年以上も前に創立したもので、絶え間ない深化により完全なものとなり、中華民族の繁栄に大きな作用をもたらしました。中国人は今に至ってもやはり中医学が病を治す保健の重要手段だと見なしています。それゆえ、中医学の利点を使い、西洋医学の欠点を補い、目の前で西洋医学が困惑するこのような偉大な歴史的責任を中国人が果たすことで解決していくのです。

結論

 針刀医学は全面的な中医学思想の本質を実践する理論を実践し、西洋医学の上に応用し、現代の西洋医学は革新的歴史段階に入りましたが、西洋医学が目の前で解決できない矛盾を解決し、西洋医学の本質を全面的に取り入れました。例えば閉合性手術理論に関する針刀医学は、西洋医学の分野である開放性手術を閉合性手術に変えたもので、大きな損傷、合併症、後遺症などの西洋医学の外科手術の欠点の多くを克服するだけでなく、西洋医学の解剖学の理論も活用し、病理学の知識に基づいた正確な位置決めと手術を行うことで、解剖学を顕微解剖学、動態解剖学、三次元解剖学、体表定位学などの各分科に発展させ、西洋医学の神髄が最大限発揮されています。

 臨床医学の観点から述べると、針刀医学は、中国伝統医学の抽象的思考方法を病理的解析に応用し、これまで診断や治療が難しかった病気を効果のある手段としました。強直性脊椎炎のように、椎体周囲の軟部組織が全てカルシウム化、骨化している場合、現代医学では治療不可能と考えられていますが、針刀医学では巨視的、抽象的な思考で、人体自身がもつ大きな自己修復能力を認識し、針刀医学特有の骨質増殖理論を根拠に、強直性脊椎炎の骨化は強直性脊椎炎の活動期に、脊柱周囲に関係する軟部組織と関節包が共に炎症性滲出し、水腫が脊柱周囲の軟部組織に張応力と引張り応力を作り出し、長期にわたることでカルシウム化、骨化を解除できない状況となるのです。針刀を用いて脊柱上の適切な部位を選定し、閉合性手術を行うことで、適切な手技を併用すると、脊柱周囲の軟部組織は異常な応力の影響から逃れ、人体の骨化組織は軟化します。これは、脊柱の正常な機能を回復させるのが目的なのです。

 内科分野では、針刀医学は中医針灸学の神髄を取り入れ、西洋医学の解剖学、病理学の知識、生物力学の原理を用い、針刀医学の基本理論も取り入れます。脊柱区域と内臓との関連は、交感神経の機能異常により、重度な内科疾病を引き起こすという理論で、脊柱区域の病因学理論は、内臓器間損傷及び電気生理回路の新理論に関して、針刀医学は多くの内科疾病の治療に主要な物治療法の手段として治療し、化学薬品の抗薬性症状や副作用を伴わず、明らかに高い治療効果を得ました。

 針刀医学の創立は、西洋医学が遭遇した解決できない矛盾や困惑を根本的に解決したのです。

参考文献:朱汉章,针刀医学原理,人民卫生出版社:2002

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