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北京堂鍼灸伊東

骨質増殖の本質

骨質増殖の本質
目次

西洋医学からみた認識

 骨質増殖の病因学の研究は世界中ですでに半世紀以上の歴史があり、比較的認められた理論で骨質増殖の病因は退行変性(骨質老化)だと考えられています。この種の理論は臨床上、治療の補助として役立てられるようなものではなく、人が成人になり年齢が上がるにつれて老化することは避けられなく、不可逆的です。ゆえに退行変性理論では骨質増殖の一種の不可逆的で変わった疾病として決められました。その一方で退行変性理論もまた、この臨床現象に完全な説明を出来ていません。
 例えば、多くの20歳代の人は骨質増殖を患っていますが、どうして早期に老化してしまうのでしょうか?ゆえに世界の医学界の専門家は絶え間なく骨質増殖の真の病因を探しています。ある骨から科学分野での研究が進み、増殖する骨質に対して化学的分析を行い、結果は増殖の骨質と人体正常骨質の化学成分は完全に一致することが分かりました。ある骨から内圧分野の研究が進み、現代の先進的な機器を用いて骨質増殖の内圧の測定を行いました。その結果もまた異常は発見されませんでした。さらに多くの専門家は骨質増殖の病因について様々な研究、調査を行いましたが、最終的によく分からないという結果でした。このため、骨質増殖の病因は世界の謎の一つとなったのです。骨質増殖の病因がはっきりと分からなく、ゆえに骨質増殖が形成された疾病は一種の治療法が無い疾病となり、ある人はその比喩として不死人の癌症といいます。

針刀医学からみた認識

 今までの研究では人体内に大きな作用がある”力”をなおざりにしてきました。更に”力”が骨質増殖発生過程の中で大きな作用をすることをなおざりにしてきました。針刀医学は人体内の力学特性に着目し、関節面の軟骨細胞と軟部組織の付着部に持続的長時間、高応力作用による変化過程を研究し、全ての骨質増殖の真の原因は骨関節周囲の高い応力であることが分かりました。ゆえに骨質増殖の根本原因は「人体内力学平衡失調」との新理論を打ち出したのです。その上、人体内で異なる異常な力学状態(圧力、牽引力、張力)で骨質増殖の異なる状況を研究しました。同時にこれらの骨質増殖の特色はみな力学的法則(作用点、方向、大小)の証明をして、骨質増殖病因の本質は人体内の力学的平衡失調が原因であると全面的に解明しました。

骨質増殖の本質

 骨質増殖の本質は骨関節周囲の軟部組織の応力異常の後、人体が骨関節の異常な力学的平衡に対する対抗性調節の結果であり、その病理の基礎は弓弦結合部の軟部組織の力学的平衡失調であり、その病理過程は硬化→カルシウム化→骨化と進展します。それはつまり骨質増殖は慢性軟部組織損傷の特殊な表現形式なのです。

 骨関節周囲の軟部組織、例えば筋肉、靭帯、筋膜の起始停止部(弦結合部)が損傷後、人体は受傷組織の自己修復を行うことに対して癒着、瘢痕、痙縮、閉塞を起こし、この種の調節結果は必然的に軟部組織付着部の骨組織産生を誘引し、局部骨組織の応力集中を発生させます。
 ヴォルフの法則(骨の形態と機能が毎回変化するか僅かにそれらの機能が毎回変化し、必然的に続けて骨の外部形態上のはっきりとした2次変化が起こり、これらの変化は数学的定量的進行による)と圧電効果学説(骨組織は応力刺激下でその骨質は増加する)が骨質増殖と力学は密接な関係があると実証しました。
 言い換えると骨組織は大小、形状、構造を再び形作ることを通して力を受ける必要性を適合させます。一定の範囲内で負荷が増加(必要性が増えた負荷を受ける)する時、骨形成が起こりえます。生理的な負荷が下がる(必要性が無いか減少する)時、骨は吸収されるでしょう。例えば負荷が大きすぎる(例えば過度の圧迫により骨折することに対する)と、骨は圧力性の壊死かつ吸収を起こします。つまり骨は必要な場所で生成し必要でない所は吸収されるのです。このことから、骨質増殖(骨増殖体)は適合する応力が変わることで発生し、それは生理的でまた病理的なことにより変化しうるのです。
 増殖部位の増加は周囲の神経、血管など重要器官が刺激と圧迫の要素を産生することになる可能性があります。骨関節周囲の軟部組織の異常を髙応力時に取り除く時、骨質増殖は減少するかひどいものだと吸収されます。著者は骨質増殖の3要素は作用点、方向、大小であることを発見しました。画像検査の観察から骨質増殖は骨関節周囲の軟部組織の起始停止部で等しく成長し、その方向と高応力の軟部組織の走行は方向が一致しており、骨質増殖の大きさは各々異なっていました。

 このように一つの理論を打ち立て、骨質増殖の病因病理の謎を解明しただけでなく、更に重要なのは骨質増殖疾病に対して根本的な活路を見出して、これこそが人体内の軟部組織の力学的平衡が回復すると言えるのです。針刀医学は全面的、系統的に人体内の軟部組織の力学的平衡と治療原則が回復させることをはっきりと述べました。その上、一つの完全な治療として各種部位の骨質増殖の具体的な取り扱い方法を考案し、すでに数百万の骨質増殖患者を健康状態へ回復させました。

おわりに

 肩の疾患で「石灰沈着性腱板炎」という疾患があります。肩の専門書で最も有名な信原克哉先生の「肩」という本にはその発生原因は”諸説あるが定説はない”としています。石灰は主成分がカルシウムなので上記の理論でいうと筋肉が硬化した次の段階と理解できます。目の前の患者がどのような病態のステージにあるのか分かるというのは、治療する上でとても重要なことだと思います。
 骨折のリハビリテーションでは骨癒合を促進するために安全範囲内で骨節部位に刺激を与えることがあります。骨折の治療以外では骨質増殖が過多になる場合が多いかと思いますが、取り除くことに関しては鍼治療は大きな力を発揮するかと思います。更に再発予防まで考えるなら高応力負荷をどのように対処するのか、ということまで考えないといけません。この時に必要なのが生体力学の知識になります。レベルの高い臨床家になるためには幅広い知識が必要になるのです。

参考文献:吴绪平,针刀医学临床研究,中国中医药出版社:2011

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