西洋医学の認識
西洋医学の研究では、頚椎症は頚椎椎間板の退行変性や頚椎の骨質増殖により動態、静態力学平衡失調を引き起こし、椎間板の突出、人体のカルシウム化が起こり、それによって頚部の筋肉、神経、脊髄、血管などへ刺激や圧迫が起こる一連の臨床症状が出現する症候群という認識です。1992年、青島で開かれた2回目の頚椎症がテーマの座談会でこの疾患を「頚椎椎間板の退行変性、及び続いて起こる病理変化により周囲の組織構造(神経根、脊髄、椎骨動脈、交感神経など)に影響を及ぼす」と定義しました。西洋医学は頚椎症を頚型、神経根型、脊髄型、椎骨動脈型、交感神経型、その他の型というように分けました。西洋医学が認識する頚椎症の発症メカニズムは3つの学説があり、1つ目は機械圧迫学説で、臨床研究と動物実験で退行変性による脊柱管狭窄が脊髄型頚椎症の主な原因であり、骨性圧迫は椎骨動脈型の頚椎症の主な原因であると打ち出しました。2つ目は生物の力学的平衡失調学説です。この学説は動物実験で証明されており、動物の頚部の軟部組織を切除した後、頚椎症が造成され、頚部の軟部組織の欠損が頚椎症を発症する原因の一つであると打ち出しました。3つ目は炎症性媒質学説で、この学説は頚椎症が大量の炎症性媒質を放出することで、引き起こされる自身の抗原が誘発する免疫反応だというものです。上記の理論は動物実験と実験研究などの方法で頚椎症の発症メカニズムを研究し、人体実験と動物実験の類似点を強調し、人体と動物実験の差異を見落としました。骨組織が頚椎病発症過程の中での重要性を強調し、軟部組織が疾病の発症、進展過程の中で重要性を見落としました。外因が疾病に繋がることを強調した一方で、自己修復や自己代償性が疾病発生過程の中での重要性を見落としたのです。
針刀医学の認識
1.病因
針刀医学は長期の臨床研究を基礎に、頚部の弓弦力学大系の損傷は、頚部の力学的平衡失調を造成し頚椎症の根本原因であると打ち出しました。様々な原因は頚部の軟部組織損傷の後引き起こされ、人体は癒着、瘢痕、痙縮というその損傷に対する、自己修復と自己代謝を行い、後者は頚部の神経や血管を圧迫したり、頚部脊柱のずれを引き起こし、頚椎症の臨床表現に繋がります。
2.病理構造
軟部組織損傷後、人体は癒着、瘢痕、痙縮により損傷に対し自己修復と自己代償を行い、この自己修復と自己代償の形式は頚部の弓弦力学大系の走行方向によって進み、最終的に点が線となり、線が面となりネットワーク状の病理構造を構築していきます。この病理構造は包括的に2つの部分があり、1つは頚部の脊柱弓弦力学大系の病理構造で、2つめは脊柱ー四肢の弓弦力学大系の病理構造です。
(1)頚部脊柱の弓弦力学大系の病理構造
頚部脊柱の弓弦力学大系は主に後頭骨上項線、環椎後部、第2~第7頚椎後面を弓として、項靭帯、上記の骨格に付着する多くの筋肉(浅層の僧帽筋、頭半棘筋、頭板状筋、頭最長筋など)、及び深層の後頭下筋、頚部脊柱間の関節包、靭帯が弦です。この主な機能は頚部の生理的弯曲を保持することです。
頚部の軟部組織損傷後、頚部脊柱の弓弦力学大系により点が線となり、線が面となり自己修復と自己代償を行います。項靭帯の起始停止部と頚部筋肉が後頭骨の上、下項線の停止部(後頭下筋や頭半棘筋など)で癒着や瘢痕が形成され、頚部の神経、血管(椎骨動脈、腕神経叢など)を圧迫、或いは頚椎のずれを引き起こし、頚椎前側方の交感神経を引張り、或いは軟部組織にかかる異常な力が、頚椎の椎間部に異常な応力として伝わり、頚椎椎間板の突出や頚部脊髄の圧迫、などを引き起こし、臨床表現を伴います。
これらの癒着、瘢痕部位は筋肉、靭帯のルートを経由し、最終的に頚椎病の立体ネットワーク状の病理構造を形成し、この病理構造の形態から見ると、これらの癒着瘢痕部位は主に外後頭隆起、後頭骨の上、下項線と頚椎棘突起などの弓弦接合部に位置し、そのイメージは‘’T型”の病理構造のように示されます(図A参照)。
(2)頚部の脊柱ー四肢弓弦力学大系の病理構造
頚部の脊柱ー四肢弓弦力学大系は頚椎、肋骨、肩甲骨が弓で、関節包靭帯、僧帽筋、前・中・後斜角筋、肩甲挙筋、頚筋膜が弦で斜張橋のような弓弦力学大系を形成します(図B参照)。頚部の脊柱ー四肢弓弦力学大系は頚椎と肋骨、肩甲骨を通じて頚部と胸郭、上肢を連結することが起源です。
頚部の軟部組織損傷後に人体は頚部の脊柱ー四肢弓弦力学大系の走行によって、点が線となり、線が面となり自己修復と自己代償を行います。僧帽筋、前・中・後斜角筋、肩甲挙筋、頚筋膜の起始停止部、及びそれらの軟部組織の経路上に癒着、瘢痕、痙縮が起こり、頚部の神経、血管(椎骨動脈、腕神経叢など)の圧迫、或いは頚椎のずれを引き起こし、頚椎の前側方にある交感神経が引張られ、臨床表現が起こります。頚椎症の病理構造については図を参照して下さい。
頚椎の解剖を未読の方はこちらを合わせて読むことで理解が深まります。
分類
1.針刀医学の分類
針刀医学は30年の臨床診療実践を通して、針刀を応用し大量の頚椎症を治療したことを基礎に、動態平衡失調と力学的平衡失調の理論を打ち出しました。この理論は人体を直接の研究対象として、過去の頚椎症の病因、病理メカニズムの認識、研究、総括を、疾病の発生過程の中で強調し、人体の自己調節、自己代償が起こる重要な作用を、主に4つの分野にまとめました。
①軟部組織の動態平衡失調と骨組織の力学的平衡失調の定義は以下の通りです。動態平衡は人体が生理条件下で、完全な各種の生理機能を果たせることを指し、その逆が動態平衡失調です。力学的平衡失調は軟部組織の動態平衡失調後を指し、関係する骨関節応力が発生することで骨関節のずれや骨質増殖が造成する変化が生じます。
②動態平衡失調は、頚椎症の病理メカニズムの中で、まず頚椎周囲の軟部組織から急性、慢性損傷の起点となり、その病理過程は全て軟部組織の急性、慢性損傷後で、人体は無菌性炎症形式を通じて自己修復、自己代償を行い、最終的に軟部組織自体の病変、軟部組織と隣接する軟部組織間の病変、関係する軟部組織とその付着部位である頚椎骨の間に広範な癒着、瘢痕、痙縮、閉塞、この4つの病理要素が人体の調整範囲内であれば動態平衡失調を引き起こすことは無く、臨床症状もありません。逆に4大病理要素が血管や神経の圧迫、損傷により直接刺激されると、血管や神経の圧迫による臨床表現を引き起こします。
③力学的平衡失調は動態平衡を基礎に、軟部組織が頚椎に付着する癒着、瘢痕が頚椎の骨関節にかかる応力失調と応力集中が起こり、人体はこの異常な引張り力、圧力、張力に抵抗します。その一方で、応力集中部位である鈎椎関節や椎体の前後縁は、局所の硬化、カルシウム化が起こり、最終的に骨質増殖を形成します。その一方で頚椎が水平面、矢状面、前額面で単一、或いは複合的な転移が起こり、骨質増殖、或いは頚椎の転移が頚部の神経、血管、脊髄を刺激する時に神経、血管、脊髄が圧迫される臨床表現が発生します。
④人体の自己調節能力は頚椎症の発生、進展過程の中での作用は、頚部軟部組織の損傷部位で異なり、各々の部位が刺激や損傷に対する反応の程度も異なり、刺激や損傷に対する代償能力も異なります。損傷に対する自己修復程度も異なり、頚椎症の臨床表現形式は大きな隔たりがあり、病状の程度も一致しません。
つまり、臨床表現が無いことと軟部組織損傷の病理表現が無いことは同じではなく、例えば癒着、瘢痕、痙縮、閉塞という、ただこのような損傷が人体の代償範囲内であれば、頚部の動態平衡失調や力学的平衡失調は起こらず、臨床表現も無く、治療は必要ありません。ただ損傷が自己代償範囲を超えると、平衡失調となり、外力に関与し治療が必要になります。言い換えると、外因(癒着、瘢痕、痙縮、骨質増殖など)は頚椎症の基礎で、内因(自己調節)は頚椎症の臨床表現を誘発する決定的要素ではなく、外因は必ず内因を通してその作用が起こるのです。
(1)針刀医学の伝統的分類
朱汉章が書いた「針刀医学原理」では頚椎症を15型に分けています。例えば環椎後頭筋膜痙縮型、環椎前方転移型、環椎後方転移型、環椎側方転移型、鈎椎関節回旋転移型、鈎椎関節前方転移型、鈎椎関節後方転移型、鈎椎関節側方転移型などです。上記の分類は2つの問題があります。一つは環椎後頭筋膜痙縮型頚椎症ですが、人体解剖学で環椎後頭筋膜という構造を見つけられません。そのため、このタイプの頚椎症の定義は曖昧です。今まで針刀学術会で各回にわたりこの件で論争があり、ある学者は環椎後頭筋膜は後環椎後頭膜だと認識し、多くの解剖学的研究を行い、針刀で後環椎後頭膜に達し、緩めることができることを証明しました。しかし、この針刀操作は大きなリスクが伴います。なぜなら後環椎後頭膜は脊髄硬膜のすぐ隣で、少しのミスで脊髄硬膜を突き破り、血種ができるか直接頚部脊髄を損傷してしまうからです。
二つ目は、その他の分類は皆力学的平衡失調が引き起こす骨関節のずれが頚椎症に至るという点です。軟部組織損傷の動態平衡失調が頚椎症のなかにあるとの表現がありません。実際、軟部組織損傷は頚椎症の根本原因で、骨関節の変化は動態平衡失調の結果です。臨床ではよく明らかな頚椎症の臨床表現を伴う患者に遭遇します。しかし画像検査で明らかな異常はありません。今までこの類の頚椎症は明らかな原因を見つけられず、不明瞭な臨床表現と画像検査の結果は原因の所在が食い違っていました。
(2)針刀医学の新分類
頚椎の形態構造に基づき、頚部の弓弦力学大系と頚椎症の病理的枠組みから、頚椎病の分類を動態平衡失調と力学的平衡失調に分けるよう刷新しました。
動態平衡失調は頚部の慢性軟部組織損傷が代償過程の中で血管、神経を圧迫し頚椎病の臨床表現を引き起こします。このタイプは項靭帯痙縮型と後頭下筋損傷型に分けられます。
力学的平衡失調は軟部組織損傷後に頚椎骨関節の転移を引き起こすので、このタイプは包括的に様々な骨関節の転移となります。鈎椎関節転移型と環軸関節転移型に分けられます(図参照)。
1.動態平衡失調型
(1)項靭帯痙縮型
項靭帯は環椎後結節、第2~7頚椎棘突起から起こり、外後頭隆起と外後頭稜に停止する三角形の弾力性線維膜です。これは頚部の脊柱弓弦力学大系の主な組成となる部分で、頚椎の生理的弯曲を維持するのに重要な作用を有しています。両側には頭板状筋、頸板状筋などの筋肉が付着しています。その起点の深部は棘間靭帯で、その主な作用は頚部の過度な屈曲、左右の回旋を制御します。他の筋肉の作用の元、頚部屈曲時、項靭帯は引張られ労作性損傷し易くX線写真で項靭帯上にカルシウム化した部位をみることができます。
(2)後頭下筋損傷型
後頭下筋は包括的に大・小後頭直筋と上・下頭斜筋をいい、 大・小後頭直筋は環椎後頭関節で頚部伸展運動に関わり、 上・下頭斜筋環椎と軸椎の平面上での回旋に関わります。後頭下筋が走行する途中で椎骨動脈の第2部末端と第3部が通過するため、後頭下筋の痙縮後に椎骨動脈を圧迫し、椎骨動脈型の頚椎症の臨床表現を引き起こします。
2.力学的平衡失調
(1)鈎椎関節転移型
鈎椎関節は頚椎の運動では椎体の側方移動の制御に関わり、椎体間の安定性を維持出来ます。第2~6頚椎棘突起部、椎体板部、横突起部の軟部組織の起始停止部である項靭帯、前・中斜角筋、肩甲挙筋、頭板状筋などが損傷すると、局部の応力が集中し、頚椎が矢状面、前額面、縦軸、横軸などの多方向へ転移し、重要な神経や血管が圧迫され、臨床症状を引き起こします。鈎椎関節の転移は包括的に以下の種類があります。
①鈎椎関節の回旋転移:第2~6頚椎の棘突起、及び一側の椎弓板部、横突起の軟部組織の起始停止部が損傷後、鈎椎関節が引張られ左側或いは右側に転移し、頚椎の正面位X線写真で頚椎棘突起が正中線上から逸脱し、左、又は右に転移し側面からのX線写真で相互の影、双方に突起の影が出現し、一側の横突起は長く、一側の横突起は短いです。
②鈎椎関節の傾斜転移:第2~6頚椎の棘突起、及び一側の椎弓板部、横突起の軟部組織の起始停止部が損傷、及び横突間靭帯損傷後、鈎椎関節が引張られ、縦に転移し、頚椎正面X線写真で両側の鈎椎関節の幅が異なり、両側の横突起は一側が高く一側が低いです。
③鈎椎関節の上方回旋転移:第2~6頚椎の棘突起、及び一側の椎弓板部、横突起の軟部組織の起始停止部が損傷後、鈎椎関節と隣り合う頚椎の棘突起が互いに近づき牽引病変をきたす場合があります。頚椎正面X線写真では鈎椎関節の間隙が広がり、棘突起間が狭く見えます。
④鈎椎関節の下方回旋転移:第2~6頚椎の棘突起、及び一側の椎弓板部、横突起の軟部組織の起始停止部が損傷後、隣り合う頚椎の棘突起の病変が引張られ、互いに近づいたり離れたりします。頚椎の正面X線写真で鈎椎関節の間隙が狭く、棘突起間が広く見えます。
鈎椎関節の転移は相対的な位置変化を引き起こし、それにより神経や血管の圧迫を引き起こします。第1に、軟部組織の牽引により、頚椎の骨関節の応力が集中し、応力集中部の骨質増殖を引き起こします。例えば鈎椎関節の骨質増殖、椎体前後縁の骨質増殖などです。更に椎間孔の位置変化をきたし、腕神経叢の圧迫を引き起こし、神経根型頚椎症の症状が出現します。 第2に、鈎椎関節の転移は横突孔の変化をきたし、椎骨動脈の蛇行を引き起こし、椎骨動脈型頚椎症の症状が出現します。第3に鈎椎関節の転移は頚椎の力学伝達異常をきたし、椎体がずれ、脊柱管容積に変化が生じ、椎間板の突出を引き起こし、脊髄型頚椎症の症状が現れます。第4に、鈎椎関節の上方、下方回旋による転移は、椎体前方の交感神経を引張り、交感神経型頚椎症の症状が現れます。
(2)環軸関節転移型
1)外側環軸関節と正中環軸関節の解剖関係
外側環軸関節と正中環軸関節は、環椎と軸椎の椎体が連接する部位で、両側の環椎後弓上に2つの椎骨動脈溝で椎骨動脈第3部がこの溝を走行しており、故に環軸関節の臨床的意義は重要です。画像所見では、正常な環軸関節の解剖関係は以下の通りです。2つの環椎側塊の大きさは等しく(A)、歯突起は正中線上にあり(B)、両側の環軸関節の間隙は対称で(C)、両側の環椎横突起の長さ(D)、両側の歯突起間隙の距離が等しく(E)、軸椎棘突起頂点は正中線上にあることです。外側環軸関節と正中環軸関節の解剖関係が正常かどうかは、力学的平衡型頚椎症の発症メカニズムと密接な関係があります。
2)環軸関節転移のメカニズム、X線所見と臨床表現の関係
環軸関節の転移は主に後頭下筋の損傷と痙縮により環軸関節が矢状面、前額面、縦軸、横軸など多方向の転移を引き起こし、重要な神経や血管を圧迫し、特に椎骨動脈の場合は臨床表現を発生させます。
①片側の大後頭直筋と下頭斜筋の起始停止部の癒着、瘢痕、痙縮の発生は、軸椎を同側に回旋させ、開口位X線写真で軸椎棘突起は正中線上に無く、同側水平方向に向かい転移し、環椎横突起の長さは一側が長く、一側が短く見えます。
②片側の小後頭直筋の起始停止部に癒着、瘢痕、痙縮が発生すると、環椎の上方及び同側への回旋を起こし、開口位のX線所見で環椎ー後頭骨間の狭窄を確認し、環椎後結節が正中線上に無く、同側水平方向へ転移します。
③片側の上頭斜筋の起始停止部に癒着、瘢痕、痙縮が発生すると、環椎が前額面で反対側へ傾斜し、開口位のX線所見で環軸間隙が非対称となり、損傷側は広く、反対側は狭くなります。環椎ー歯突起間は非対称で、損傷側は広く、反対側は狭くなります。頚椎の側面X線撮影では、両側の環椎後弓が同一平面上に無く、両弓の間は“O”形を呈します。
④片側の大後頭直筋と小後頭直筋、下頭斜筋の起始停止部に癒着、瘢痕、痙縮が発生すると、環椎或いは軸椎が同側へ回旋し、開口位のX線所見で軸椎の棘突起は正中線上から逸脱し、同側水平方向へ向かい転移し、環椎外側塊の大きさは異なり、損傷側は小さく、反対側は大きく、環椎横突起の長さは一側は長く、一側は短く見えます。
環軸関節転移型頚椎症は後頭下筋(上・下頭斜筋、大・小後頭直筋)損傷後に形成される4大病理要素が、後頭下三角内の椎骨動脈、大後頭神経、後頭下神経(C1後枝)、頚部交感神経節を牽引、圧迫します。発病初期に筋肉の癒着や瘢痕が直接神経、血管を圧迫しても、画像検査で異常は見られません。しかし、椎骨動脈型頚椎症と交感神経型頚椎症の臨床表現は出現します。病状が進行するにつれて、損傷された後頭下筋は環軸椎を引張り、ずれを引き起こし、悪化すると椎骨動脈を圧迫し、重篤な椎骨動脈型頚椎症の臨床表現が出現します。この時、頚椎開口位X線所見で環椎ー歯突起間隙は非対称で、環軸関節面も非対称で、軸椎回旋転移など環軸椎のずれが画像所見に表れます。上記の分析を通じて見えてくることは、仮に西洋医学による頚椎症の分類と画像読影が完全であったとしても、観血的手術を行うと脊柱管、横突孔を拡大し、軟部組織による圧迫は解除せず、神経根の圧迫も完全に解除できません。逆に、間欠性手術の切開痕に癒着、瘢痕を形成し、軟部組織は更に癒着、痙縮し重篤な病状になることさえあるのです。
上述した分析で分かることは、頚椎の画像所見と後頭下筋の損傷メカニズムは一致しており、椎骨動脈第2部末端と第3部は起始停止部の間にあり、後頭下三角の解剖位置と後頭下筋もまた密接な関係があります。故に頚椎の画像所見に基づくと、神経、血管の圧迫部位を推定でき、針刀治療は画像診断の補助となります。
要約すると、針刀医学の新分類は容易に引き起こす環椎後頭筋膜痙縮型(針刀で後環椎後頭膜を緩める必要はない)に対応し、それにより針刀で後環椎後頭膜を操作する危険性を避け、針刀操作による血種や脊髄損傷などの重篤な合併症を防止します。同時にこの新分類はマクロ的に軟部組織損傷が頚椎症発症過程の中で重要な基礎であることを体現しており、ミクロ的観点から頚椎症の具体的な病変部位を述べ、神経、血管、精髄が圧迫を受ける具体的な病巣部位を明確にして、臨床で複雑な重篤な混合型頚椎症の発症原とメカニズムを見つけて、画像診断と臨床表現が合わない原因の所在でさえも見つけ出すのです。
動態平衡失調型頚椎症と力学的平衡失調型頚椎症は区別があれば、関係もあり、それらの区別は臨床で相対的に独立し、相応の臨床表現を引き起こします。しかし、動態平衡失調型の画像診断で明らかな変化が無いと、針刀治療は相対的に簡単で、治療期間は短く、治療点は明確です。力学的平衡失調型は画像診断で明らかな変化があり、針刀治療は相対的に複雑で、治療期間は長く、針刀治療部位は複雑です。これらの関係は動態平衡失調型は頚椎症の発症初期で、病状が更に進行すると力学的平衡失調型頚椎症になるのです。
臨床表現
1.項靭帯痙縮型
(1)症状
初期は頭頚部、肩背部の疼痛で、時に強い疼痛となり、頭頚部は往々にして動かしたり一側に傾けることが怖くて動かせなくなります。動作時に体幹と同じ動きになることもあり、肩背部を触ることも怖く、重度な場合は頭を上げられず、睡眠に影響があります。圧迫すると疼痛が増悪し、偏頭痛、後頭部の疼痛、胸痛、上肢の筋力低下が起こり、項部筋に腫脹や痙攣が起こることもあり、明らかな圧痛があり、前斜角筋の痙攣を伴うと放散痛や麻痺が起こり、咳やくしゃみで増悪します。急性期の後、頚肩部と上背部の凝った痛みを生じます。
(2)所見
頚部の触診で項靭帯の腫脹や圧痛、棘突起及び棘突起傍の圧痛、頚部筋肉の痙攣、斜角筋、菱形筋、棘上筋、棘下筋、肩甲挙筋、大・小円筋に圧痛点があります。副神経に影響があると胸鎖乳突筋の痙攣と圧痛が出現します。
(3)頚部正面X線
異常ありません。
2.後頭下筋損傷型
(1)めまい
最もよく見られ、多くは複視、眼振、耳鳴り、難聴、悪心、嘔吐などの症状を伴います。発作時に足元がふらつき、立位が不安定になります。頭部の運動では、上を向いたり、急に横を向く、或いは反復して左右に回旋する時にめまいが発生したり、めまいが増悪します。重度なケースでは気絶、意識障害が起こることもあります。要するに、頭頚部の活動と姿勢の変化で重度なめまいを誘発することが、本疾患の重要な特徴です。
(2)頭痛
1つめは、椎骨脳底動脈の血液供給不足による側副循環血管の拡張により起こる血管性頭痛で、疼痛は持続性で、朝の起床時や頭部を動かす時、車に乗り揺れ動いている時に症状が出現、或いは増悪します。症状は数分。或いは数時間、数日に及ぶ時もあります。疼痛の多くは後頭部、又はこめかみで、ズキズキした痛みや灼熱痛、張痛を呈し、痛みは耳の後部や顔面部、歯、後頭部に向けて放散します。発作時に悪心、嘔吐、発汗、流涎、動悸、息苦しさ、血圧変化など自律神経失調症の症状があります。
2つめは、後頭下三角内に大後頭神経が通り、後頭下筋損傷後に、この神経が圧迫され片頭痛の症状が現れ、一側の痙攣性発作は治りにくい病です。
(3)目の症状
例えば視力減退、一過性黒内障、一時的な視野欠損、複視、幻視、失明など、これらは後大脳動脈の虚血によるものです。視力障害は主に大脳の後頭葉の視覚中枢の虚血により起こり、そのため皮質性視力障害といわれます。椎骨動脈は後交通動脈を介し、内頚動脈と相連なり、故に反射性の網膜動脈痙攣を引き起こし、眼痛や眼底血管の張力変化が出現し、頚部伸展時は特に明らかとなります。一部の患者は血管痙攣性網膜炎を引き起こします。このような患者は眼瞼痙攣、結膜充血、球後視神経炎、眼球突出、緑内障、ホルネル症候群、などの症状を伴います。
(4)脱力発作
この種の発作と頭部の急な動き、或いは姿勢の変化とは関係があり、めまいがひどい時や頚部を動かす時に発生し、突然の四肢のしびれや、弱弱しくつまずくことがありますが、意識は清明です。
(5)感覚障害
顔面、舌体、四肢或いは阪神のしびれ、時に針で刺されるような痛みや蟻が這っているような感覚を伴います。椎骨動脈は頭蓋内で多くの分枝があり、臨床表現は複雑で変化が多いです。
3.鈎椎関節転移型
この頚椎病は項靭帯痙縮型頚椎症が発展した結果です。
(1)椎骨動脈型頚椎症の臨床表現
後頭下筋損傷型を参考にして下さい。
(2)神経根型頚椎症の臨床表現
頚部症状は腕神経叢根部の圧迫を伴うのが主です。その表現は後頚部や肩、腕の疼痛で、頚部の活動は制限を受け、患側上肢は重く筋力が低下し、頚部の走るような神経痛、針で刺されるような感覚、電気で痺れるような感覚が伴い、握力が低下し物を地面に落としてしまいます。同時に腕神経叢の分布域と一致する感覚、運動、反射障害を伴うことがあり、前根が圧を受けると主に筋力の変化が比較的明らかで、後根が圧を受けると主に感覚障害の症状が比較的重くなります。感覚障害と運動障害は往々にして同時に出現しますが、感覚神経の線維の過敏性が高いと、より早くその症状が出現します。
(3)脊髄型頚椎症の臨床表現
脊髄型頚椎症の多くは下肢の症状が主ですが、上肢が重く筋力低下したり動作が緩慢になることもあります。しかし、多くは神経根性疼痛は無く、主な症状を以下に述べていきます。
①脊髄片側の圧迫
主な表現は片側の脊髄前角、錐体路、脊髄視床路が生涯された症状で、即ち典型的、或いは非典型的なブラウンセガール症候群です。筋張力は増強し、筋力は減弱し、表在反射波減弱し、腱反射は亢進し、病理反射が出現し、反対側肢体は運動障害が無いですが、表在感覚は減弱します。頚部と患側肩の疼痛があります。
②脊髄両側の圧迫
主な表現は緩慢に進行する両下肢のしびれ、寒気、疼痛、歩行不安定、不自然な歩容、震え、筋力低下し、綿を踏んで歩くような感覚や足元がふらつく状態です。症状は次第に増悪し持続性となり、表現は運動神経が元で神経路障害の不全痙攣性麻痺です。膀胱、直腸括約筋症状もよく見られ、尿意切迫感、頻尿、排尿無力、尿失禁、大便無力(便を出す力が弱い)など、個別の患者により機能障害があります。
頚椎症による麻痺は半身不随、三肢麻痺、四肢麻痺、交差性麻痺など様々なタイプがあります。下肢の麻痺は概ね中枢性で、出現が早いと病状は重くなります。これは錐体路が支配する身体下部の運動線維が脊髄の表面に位置し、支配する上肢の運動線維が脊髄の深部に位置することが原因です。
脊髄型頚椎症は比較的重篤で、頚椎症の中でも最も重篤な種類の一つで、西洋医学では主に観血的手術で治療しており、術後、並びに発症、後遺症について、東洋医学界、西洋医学界ともに重視しています。
(4)交感神経型頚椎症の臨床表現
①五官(目、耳、鼻、舌、唇)の症状
交感神経が刺激を受ける目の症状:眼球の張痛、羞明、涙が出る、眼瞼無力、かすみ目、視力低下などです。
交感神経が麻痺する目の症状:眼瞼下垂、ドライアイ、瞳孔縮小、鼻と咽頭の不快感、耳鳴り、聴力低下、難聴などです。
②頭部、顔面の症状
後頭部の疼痛、張り、しびれ、頭痛或いは片頭痛、頭重感、めまい、顔面の熱感、充血、しびれなどです。
③心血管症状
動悸、不整脈、前胸部の疼痛、心拍リズムの乱れ、発作性頻脈、血圧異常などです。
④神経栄養、汗腺機能障害の症状
多汗、或いは少汗、毛量過多、薄毛、脱毛、チアノーゼ、乾燥などです。
⑤血管運動障害の症状
血管拡張症状:指先の発赤、灼熱感、疼痛、腫脹などです。
血管痙攣症状:肢体の冷え、チアノーゼ、しびれ、疼痛、水腫、皮膚温低下などです。
⑥その他の症状
重苦しい心持ち、不眠、多夢、記銘力減退、悪心、噯気(げっぷ)、胃の不快感、軟便又は便秘、頻尿、尿意切迫、残尿、尿失禁などです。
4.環軸関節転移型
(1)この頚椎症は後頭下筋損傷型頚椎症が進行した結果です。
(2)表現は重篤な椎骨動脈型頚椎症の臨床表現です(後頭下筋損傷型臨床表現を参照)。
(3)頚椎開口位X線所見で明らかな環椎後頭関節、或いは環軸関節に各種のずれが生じています。
診断の要点
1.項靭帯痙縮型
(1)後頚部の疼痛や不快感がある。
(2)長期の下を向く作業をしている、或いは高い枕で寝る、或いは頚部を過度に前屈、回旋した受傷歴がある。
(3)項靭帯の分布領域、或いは付着部に圧痛がある。
(4)過度に前屈、後屈すると後頚部の疼痛が増悪する。
(5)前斜角筋、副神経の損傷があると、神経根型頚椎病の臨床表現が出現する。
(6)頚椎正面X線画像で異常所見がない。
2.後頭下筋損傷型
(1)臨床表現:めまい、頭痛、視力低下、一過性の視野欠損、複視、脱力発作がある。
(2)脳血流検査で基底動脈の供給不足が確認できる。
(3)頚椎X線所見で異常が無い。
3.鈎椎関節転移型
(1)各種の頚椎病の臨床表現は、単独の症状のこともあれば、複数の症状が同時に出現することもあります。これを複合型(混合型)といいます。
(2)画像検査
画像検査では、軟部組織の損傷部位、損傷の程度、人体の代償の程度はそれぞれ異なるので、画像所見も異なります。注目に値するのは針刀医学が頚椎症の発症メカニズムの研究を通じて、西洋医学が見落としてきた部分や、画像の中の微細な変化、特にX線画像所見の徹底した分析と研究を行い、認識を刷新したことです。例えば横突起の長さが左右で異なる、鈎椎関節の非対称、棘突起の頂点が正中線上にない、椎間間隙の広さなど今まで重視されない、微小な変化の病理メカニズムを分析、研究を行いました。実際、針刀医学の研究で、これらの微小な変化が人体の代償の一部分で、人体自身の代償範囲を超えた時、頚椎症を引き起こす病因要素となります。棘突起頂点が正中線上にないことは鈎椎関節の回旋によるもので、椎間間隙の広がりは椎体が上方回旋位によるものです。従ってX線所見は針刀治療の重要な指標となります。
4.環軸関節転移型
臨床表現と画像所見に基づき疾病の診断を行い、環軸関節転移型頚椎症に対しては頚椎の開口位X線写真撮影が必要で、外側環軸関節と正中環軸関節の正常な解剖関係と後頭下筋損傷が引き起こす環椎後頭関節転移のメカニズムは新たなX線所見の分析を通じて、病変部位が分かります。
治療法
(1)項靭帯痙縮型
1.大きなT型を採用した針刀施術
(1)体位:頚部をやや屈曲した腹臥位
(2)体表位置(図参照)
①横のラインは5か所で、中点は外後頭隆起で、上項線上で外側に2.5cm離れた位置に2か所、更に2.5cm外側に2か所となります。この5か所は項靭帯の停止部、胸鎖乳突筋後ろ側の部位、頭最長筋の停止部、頭半棘筋の停止部です。
②縦の5か所はC3~C7の棘突起頂点です。この5か所は項靭帯、頭板状筋、僧帽筋、頸板状筋などの起始部です。
(3)針刀操作
①横のライン第1刀は針刀で項靭帯停止部、僧帽筋起始部、頭半棘筋停止部を緩めます。術者は刺し手に針刀を持ち、刃先のラインは人体縦軸と合わせ、針体は尾側に45°傾斜し、後頭骨に対し垂直で、押し手の母指は外後頭隆起の頭皮上に置き、押手の母指背側から刺入します。針先が上項線骨面に達した後、刃先を90°向きを変え2~3刀削ります。範囲は0.5cm以内とします。そして針刀を皮下組織まで戻し、左右に45°の角度で各々上項線の下0.5cmを2~3刀削ります。範囲は0.5cm以内として、僧帽筋起始部と頭半棘筋停止部を緩めます。
②横のライン第2刀は①から外側2.5cmの2点が刺入部位です(図参照)。この刺入点は項靭帯の停止部を緩めます。術者は刺し手に針刀を持ち、刃先のラインは人体縦軸と合わせ、針体は尾側に45°傾斜し、後頭骨に対し垂直で、押し手の母指は上項線の刺入点に置き、押手の母指背側から刺入します。針先が上項線骨面に達した後、刃先を90°向きを変え2~3刀削り、範囲は0.5cm以内にします。
③横のラインの第3刀は②から外側2.5cmの2点が刺入部位です(図参照)。この刺入点は頭板状筋の停止部、胸鎖乳突筋の停止部、頭最長筋の停止部を緩めます。術者は刺し手に針刀を持ち、刃先のラインは人体縦軸と合わせ、針体は尾側に45°傾斜し、後頭骨に対し垂直で、押し手の母指は上項線の刺入点に置き、押手の母指背側から刺入します。針先が上項線骨面に達した後、刃先を90°向きを変え2~3刀削り、範囲は0.5cm以内にします。
④縦のラインの5か所はC3~C7棘突起部、頭板状筋の起始部、僧帽筋起始部、頸板状筋起始部、棘間靭帯を緩めます。術者は刺し手に針刀を持ち、刃先のラインは人体縦軸と合わせ、針体は頭側に45°傾斜し、棘突起と60°の角度を成し、針刀が棘突起頂点に達した後、縦横に2~3刀削り、範囲は0.5cm以内にします。
その後、針刀を棘突起上縁まで戻し、針体は徐々に尾側へ向け傾斜させ、棘突起の方向と合わせます。刃先を90°向きを変え、棘突起上縁に沿って内側へ2回切開し、範囲は0.5cm以内とします。棘間靭帯を切開します。
(4)注意事項
初学者が頚椎の針刀術を行うのは適しません。頚部は神経、血管が多く、構造も複雑で解剖の知識が不十分で、針刀術を強制すると、重度な合併症や後遺症が発生することがあります。術者は頚部の局所解剖を熟知し、神経や血管の走行を心に刻み、針刀操作はほぼ骨面上で行ってこそ、安全が保障されるのです。
項靭帯は“Y”の形を呈し、環椎後結節と第2~第7頚椎棘突起から起こり、後上方へ向かい外後頭隆起と外後頭稜に停止します。針刀術は非観血的術で、術者が立体解剖を意識することは必須で、項靭帯の形状や起始停止部に対し、自信がある状態にしなければなりません。
2.頚肩部の筋肉への治療
(1)体位:頚部をやや屈曲した腹臥位
(2)体表の位置:図参照
(3)針刀操作
①第1刀は棘上筋を緩めます。棘上窩の一部から棘上筋の起始部を見つけて刺入します。術者は針刀を持ち、刃先のラインは皮膚と90°の角度を成し、皮膚に刺入し、皮下組織を経由し、棘上筋筋腹の中を縦に3~4回動かし、更に棘上窩の骨面を2~3回縦横に削ります。
②第2刀は棘下筋を緩めます。棘下窩の一部から棘下筋の起始部を見つけて刺入します。術者は針刀を持ち、刃先のラインと棘下筋の筋線維方向を合わせて、針体と皮膚は90°の角度を成し皮膚に刺入し、皮下組織を経由し、棘下筋筋腹の中を縦に3~4回動かし、棘下窩の骨面を縦横に2~3回削ります。
③第3刀は小円筋を緩めます。棘下窩の一部から小円筋の起始部を見つけて刺入します。術者は針刀を持ち、刃先のラインと小円筋の筋線維方向を合わせて、針体と皮膚は90°の角度を成し皮膚に刺入し、皮下組織を経由し、小円筋筋腹の中を縦に3~4回動かし、棘下窩の骨面を縦横に2~3回削ります。
④第4刀は大円筋を緩めます。棘下窩の一部から大円筋の起始部を見つけて刺入します。術者は針刀を持ち、刃先のラインと大円筋の筋線維方向を合わせて、針体と皮膚は90°の角度を成し皮膚に刺入し、皮下組織を経由し、大円筋筋腹の中を縦に3~4回動かし、棘下窩の骨面を縦横に2~3回削ります。
⑤第5刀は肩甲挙筋停止部を緩めます。圧痛点が肩甲骨の内側縁上部にある時、術者は針刀を持ち、刃先のラインは肩甲挙筋の筋線維と平行にして、針体と皮膚は90°の角度で刺入し、肩甲骨内側上縁の骨面に達したら、刃先のラインを90°向きを変え、肩甲骨内側上縁を2~3回削り抜針します。
(4)注意事項
肩甲挙筋停止部に刺入する場合、肥満患者だと肩甲骨内側上縁を確認することが困難な場合があります。患者の肩関節を上下に動かすよう指示し、術者は母指尖で肩甲棘を触れ、上に向かって肩甲骨の内側縁上部を探します。仮に解剖位置がよく分からない状態だと、針刀術はできません。その理由は解剖位置が不明瞭だと、気胸などの重篤な結果につながる可能性があるからです。針刀操作時、剥離は骨面上で行うべきで、骨面から離れてはならないのです。
(2)後頭下筋損傷型
網目理論によると、後頭下筋損傷型頚椎症に対して、小さなTの形の術式をデザインし、後頭下筋の癒着や瘢痕を緩めます。長年の研究応用で、この術式の操作性は証明されており、確かな治療効果は広く普及されています。
1.針刀で小さなT形を採用した術式
(1)体位:頚部をやや屈曲した腹臥位
(2)体表の位置:図参照
①横のライン5か所は中点が外後頭隆起で上項線上で外側に2.5cmの2か所、更に外側の2か所の計5か所で項靭帯とは区別されます。両側は大・小後頭直筋と両側の上頭斜筋の起始部です。
②縦のライン2か所は環椎棘突起と軸椎棘突起で大後頭直筋と小後頭直筋、下頭斜筋などの軟部組織の起始部です。
(3)針刀操作
①横のラインの第1刀は項靭帯の停止部、僧帽筋の起始部、頭半棘筋の停止部を緩めます。術者は針刀を持ち、刃先のラインは人体の縦軸と一致させ、針体は尾側に45°傾斜させ、後頭骨に対し垂直で、押手の母指は外後頭隆起の頭皮上に置き、押手の母指背側から刺入します。針刀が上項線の骨面に達した後、刃先のラインを90°方向転換し2~3回削り、範囲は0.5cm以内として、僧帽筋起始部と頭半棘筋の停止部を緩めます。
②横のラインの第2刀は、第1刀の刺針部位から左右へ外側に2.5cmの2か所が治療点です。この両側の治療点は大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋の停止部を緩めます。術者は針刀を持ち、刃先のラインは人体の縦軸と一致させ、針体は矢状面に対し45°、尾側に45°傾斜させ、後頭骨に対し垂直に、押手の母指は上項線の治療点上に置き、押手の母指背側から刺針し、針刀が上項線骨面に達した後、刃先のラインを90°方向転換し、2~3回削ります。範囲は1cm以内とします。
③横のラインの第3刀は、第2刀の刺針部位から左右へ外側に2.5cmの2か所が治療点です。この両側の治療点は頭板状筋、胸鎖乳突筋、頭最長筋の停止部を緩めます。術者は針刀を持ち、刃先のラインは人体の縦軸と一致させ、針体は尾側に45°傾斜させ、後頭骨に対し垂直に、押手の母指は上項線の治療点上に置き、押手の母指背側から刺針し、針刀が上項線骨面に達した後、更に下項線まで刺入し、刃先のラインを90°方向転換し、2~3回削ります。範囲は1cm以内とします。
④縦のラインの第1刀は環椎後結節で小後頭直筋を緩めます。術者は針刀を持ち、刃先のラインは人体の縦軸と一致させ、針体は頭側に45°傾斜させ、環椎後結節と60°の角度を成します。針刀が環椎後結節に達した後、骨面上で2~3回上下に動かします。
⑤縦のラインの第2刀は、軸椎棘突起で大後頭直筋の起始部と下頭斜筋の起始部を緩めます。術者は針刀を持ち、刃先のラインは人体の縦軸と一致させ、針体は頭側に対し45°傾斜させ、軸椎棘突起と60°の角度を成し、針刀が軸椎棘突起頂点に達した後、縦横に2~3回削ります。範囲は0.5cm以内とします。大後頭直筋の起始部を緩めた後、やや針を戻し、軸椎棘突起両側から刺入し、深度は0.5cm以内で上下に2回動かし、上頭斜筋の停止部を緩めます。再び針刀を棘突起頂点の上縁に戻し、針体は徐々に尾側へ傾斜し、頚椎棘突起の走行と一致させ、刃先のラインは90°向きを変え、棘突起上縁に沿って内側へ2回、棘間靭帯を切開します。範囲は0.5cm以内とします。
(4)注意事項
針刀で刺入する際に、針体は頭側に45°傾け、軸椎棘突起と60°の角度を成します。針刀が軸椎棘突起頂点の骨面に達したら、棘突起頂点の病変部を緩めます。更に棘間へ針を進め、棘間靭帯を緩めます。棘突起の上縁で針を戻す際、針体を徐々に尾側へ傾け、頚椎棘突起の走行と一致させて棘突起間へ針を進めることができます。
棘間靭帯を切開する範囲は0.5cm以内であれば、脊柱管を切開することはありません(図参照)。この範囲を超えるようだと、明らかにリスクが高まります。
2.環軸椎の軟部組織付着点への治療法
(1)体位
頚部をやや屈曲した腹臥位
(2)
体表の位置:乳様突起後方を触察すると骨突起が確認できます。それが環椎横突起です(図参照)。軸椎棘突起は図を参考にして、軸椎横突起を確かめます。
(3)針刀術
①環椎横突起の針刀術
上頭斜筋の起始部と下頭斜筋の停止部を緩めます。まず乳様突起を触察し、乳様突起後方を触察し環椎横突起を確認します。術者は針刀を手に持ち、刃先のラインと人体の縦軸を一致させ、針体は頭側に45°傾け、環椎横突起と60°の角度を成し、針刀は斜め外方から乳様突起の下を通し、皮膚、皮下組織、頭最長筋、胸鎖乳突筋後部を貫き環椎横突起骨面に達します。そして針体を徐々に尾側へ傾け、環椎横突起と平行にして、骨面上を2回削り、範囲は0.1cm以内とします(下図参照)。
②環軸椎関節包の針刀術
関節包靭帯を緩めます。まず腹臥位で頚部やや屈曲位で軸椎棘突起を確認します。軸椎棘突起頂点から外側に1.5cmが刺入部位です。術者は針刀を手に持ち、刃先のラインと人体の縦軸を一致させ、針体は頭側に45°傾け、軸椎横突起と45°の角度を成し、皮膚、皮下組織、後頚部の筋肉を貫き環軸関節骨面に達します。そして針体を徐々に尾側へ傾け、環軸関節と平行にして、環軸関節包の間隙を2回削り、範囲は0.1cm以内とします(下図参照)。
(4)注意事項
①環椎横突起の針刀操作
針を進める時、針体は頭側に45°傾斜させ骨面に到達させれば、針刀は脊柱管や横突孔へ入りません。しかし、この時針刀で緩める術がない時は、骨面で行う方法を参考に、針体を徐々に尾側へ傾け環椎横突起と平行にすれば、削ることが可能です。横突起先端と横突孔の距離は2mm以上あるため、範囲を0.1cm以下にすれば、横突孔へ入ることはありません。
②環軸関節の針刀操作
針を進める時、針体は頭側に45°傾斜し、軸椎棘突起の操作を参考に、範囲は0.2cm以内とします。
毎回、針刀術後、患者に腹臥位になってもらい、助手は肩を持ち、術者は患者の頭頚部に対し、右肘を屈曲し患者の下顎を支え、左手前腕尺側は患者の後頭骨上に置き、頚部の動きと同時に揉みほぐしを行います。この時、力をかけすぎなければ、新たな損傷を防げます。最後に両肩を持ち上げ、患者の肩から前腕を数回さすります。術後は感染予防のため、抗生物質を3日服用してもらいます。
3.力学的平衡失調型頚椎病の針刀治療
(1)鈎椎関節転移型
1.大きい“T”形の針刀術
項靭帯痙縮型頚椎病の治療法を参照してください。
2.椎間関節包に対する治療
(1)体位
頚部をやや屈曲した腹臥位
(2)体表の位置
臨床表現及び頚椎の正面X線所見により、頚椎病変を確認し、頚椎の病変部と上下の頚椎関節突起部、頚椎後結節の部位を針刀で緩めていきます。例えば、C4-C5鈎椎関節の転移は、C3-C4,C4-C5,C5-C6の椎間関節包を緩めます。
C2-C7の椎間関節の左右直径は平均で3.3~5.8mmで、棘突起から椎間関節中心までの距離(A)は平均で11mmで、棘突起から横突起後結節までの距離は平均で20~24mmです(図参照)。
頚椎の椎間関節包を緩める位置は、頚椎正面X線所見で棘突起から椎間関節中心までの距離を測り、椎間関節包の治療部位を決めます。第7頚椎棘突起を触察した後、上に向けて病変頚椎の棘突起を探します。棘突起頂点から外側に2.0cmが、左右の横突起後結節を緩める体表からの治療部位となります。
(3)針刀操作
①第1刀は、左側の椎間関節包を緩めます。体表から関節包靭帯の位置を確認して刺入します。刃先のラインと人体の縦軸を一致させ、針体は頭側に45°傾け、頚椎棘突起と60°の角度を成します。針刀が関節突起骨面に達した後、針体は徐々に尾側に傾け、頚椎棘突起の方向と一致させ、骨面上をやや移動させると、当てが外れるような感覚があります。これが椎間関節包です。2回切り込み、範囲は2mm以内とします(図参照)。
②第2刀は右側の椎間関節包を緩めます。方法は左側と同様です。
③第3刀は左側の横突起後結節を緩めます。体表から横突起後結節の位置を確認して刺入します。刃先のラインと人体の縦軸を一致させ、皮膚、皮下組織、筋膜を貫き、横突起骨面に達した後、骨面に沿って外側へ削っていくと当たりが外れた感覚がする所があり、そこが横突起後結節です。反復して2回削ります(図参照)。
④第4刀は右側の横突起後結節を緩めます。方法は左側の横突起後結節と同様です。
3.横突起後結節の治療
(1)体位
腹臥位
(2)体表の位置
頸椎正面X線所見で棘突起から横突起後結節までの距離を測り、横突起後結節の治療部位を決めます。第7頚椎棘突起を触察後、上方に病変頚椎の棘突起を探し出し、棘突起頂点から外側に2.0cmの所を横突起後結節の治療部位とします。
(3)針刀術
針刀で右側の横突起後結節に付着する頭最長筋、頚最長筋、頭半棘筋の起始停止部を緩めます。横突起後結節の体表の位置で決めた部位から刺入し、刃先のラインと人体の軸を一致させ、皮膚、皮下組織、筋膜を貫き、横突起骨面に達した後、骨面に沿って外側に削り、当たりが外れる感じの所が横突起の後結節です。反復して横に2回削ります。
(5)注意事項
X線所見に基づき位置を確定させて針刀術を行いますが、特に中部の頚椎椎間関節包や横突起後結節を治療する時、患者を腹臥位かつ頚部屈曲位にさせて、頚椎の湾曲を無くすことで、針刀の操作は行いやすくなります。
4.肩甲挙筋停止部の治療
(1)体位
頚部をやや屈曲した腹臥位
(2)体表の位置
肩甲挙筋停止部(図参照)
(3)針刀術
圧痛点が肩甲骨内側縁上部にあった場合、術者は針刀を手に持ち、刃先のラインと肩甲挙筋筋線維方向を平行にして、針体と背部皮膚は90°の角度を成し、四歩進針規則の通りに針刀を刺入し、皮膚、皮下組織を貫き、肩甲骨上角辺縁の骨面に達した後、刃先を90°方向転換させ、肩甲骨上角に向かい骨面を2~3回削ります。範囲は0.5cmです。
(4)注意事項
肥満患者だと肩甲骨内側上縁を確認することが困難な場合は、患者の肩関節を上下に動かすよう指示し、術者は母指尖で肩甲棘を触れ、上に向かって肩甲骨の内側縁上部を探します。仮に解剖位置がよく分からない状態だと、針刀術はできません。解剖位置が不明瞭だと、気胸などの重篤な結果につながる可能性があるからです。針刀操作時、剥離は骨面上で行うべきで、骨面から離れてはならないのです。
毎回、針刀術後に頚椎整復手技を行います。患者をベッド上に背臥位で寝かせて、頭頂部とベッドの端をそろえて、術者は左手を患者の後頚部に置き、右手は下顎を支え、左手で後頚部の筋肉を3回つまみ、患者の後頚部を保持します。助手は患者の両肩を引張り、圧迫します。1分後、術者は急に大きく引張り、左手の母指を患側脊椎の横突起(鈎椎関節を右回旋させる場合)に置き、示指で棘突起を引っ掛け、右手で患者の下顎部を支えます。患者にゆっくり頭部を右側にねじるよう指示し、術者は右手掌で患者の顔面左側を抑え、最大限ひねり、すばやく両手の共同動作で同時に、左手環指で棘突起を左側に向けて引張り、母指で横突起を頚部前側左方向へ押し、術者は右手で患者の顔面左側を押します。この一連の動作は同一時間で、同一横断面上で完成します。そして頭の位置を戻し、再び牽引に対抗する動作を1回行います。手技治療が終わった後、直ちに頚部を固定します。術後3日間は感染予防のため抗生物質を服用します。
(2)環軸関節転移型
網目理論に基づくと、頚椎病の根本原因は軟部組織損傷で、上部頚椎の病変による頚椎症は、小さなT形の新刀術をイメージした針刀術で後頭下筋の癒着、瘢痕を緩めていきます。環軸関節転移型の特徴は小さなT形をイメージした刃針術を基礎に、環椎横突起の部位を精密に緩めることです。
1.第1刀は小さなT形をイメージした針刀術
後頭下筋損傷型の針刀治療を参考にして下さい。
2.第2刀は環軸椎の軟部組織付着部への治療
後頭下筋損傷型の針刀治療を参考にして下さい。
3.第3刀は肩甲挙筋、頭板状筋起始部への治療
(1)体位
頚部をやや屈曲した腹臥位
(2)体表からの位置
肩甲挙筋起始部(上位4つの頚椎横突起の後結節)の圧痛点、頭板状筋起始部(C3ーT3棘突起)の圧痛点
(3)針刀術
①第1刀は肩甲挙筋起始部を緩めます。圧痛点が肩甲挙筋起始部にあった場合、頚椎横突起に刺入します。術者は針刀を手に持ち、刃先のラインと頚椎の縦軸は平行で、針体と頚部の皮膚は90°の角度を成し、四歩進針規定に従い刺入します。針刀は皮膚、皮下組織、筋膜を貫き、横突起先端に達した時、まず縦に削り、次に横へ削ります(刃先は終始横突起先端骨面上で動かす)。範囲は0.2cmです。
②第2刀は頭板状筋起始部を緩めます。筋肉起始部の圧痛点を触知し、術者は針刀を手に持ち、刃先のラインと人体の縦軸を一致させ、針体は皮膚に対し90°で刺入し、筋肉起始部である頚椎棘突起頂点及び両側に達したら、棘突起根部を越えないようにすれば、神経や脊髄を損傷することはありません。棘突起頂点及び両側を骨沿いに2~3回横に削ります。範囲は1cm以内とします。
(4)注意事項
頚部の詳細な解剖、立体解剖を熟知して、局部の神経、血管の走行は十分把握していなければなりません。さもなければ、動脈損傷や神経損傷を引き起こし重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
毎回、針刀術後は患者を腹臥位にして、助手は肩を引張り、術者は患者の後頚部に対し、右肘を屈曲し患者の下顎を支え、左手前腕尺側は患者の後頭骨上に置き、頚部の活動に伴い揉みほぐします。力をかけすぎなければ、新たな損傷は発生しません。最後に両肩を持ち、患者の肩から前腕を数回揉みます。術後は感染予防のために抗生物質を3日間服用します。
術後管理
1.日常生活の管理
患者に防湿、保温に注意するよう指導し、高い枕で寝ている人は低い枕に変えてもらいます。
2.飲食の管理
頚椎症の発症は、加齢、椎間板の老化、退行変性によるものが多く、骨病の範疇で飲食に関する注意点は以下の通りです。
(1)高蛋白質、高ビタミン、低脂肪の流動食を提供し、食品の種類は多くして、例えば魚類、肉類、骨スープ、野菜、果物などです。合理的に配合し、毎日種類を変えて、長期に臥床している病人は野菜や果物を多く与えると、便秘を防げます。術後後期は適切な薬膳を与え、党参(トウジン)、怀山药(自然薯の漢方薬)、クコの実を各2~3g加えると食欲が増進します。
(2)時間通りに定められた量で、空腹過ぎず満腹過ぎず、暴飲暴食せず、少量を多く食べます。素問の生気痛天論では“飽食すれば筋脈は弛む”とあり、※飽食は身体に良くありません。
※飽食:あきるほど腹いっぱい食べること
(3)食物の色、香、味に注意します。病人の飲食習慣により異なる調理方法で食事をとるようにすると、患者の食欲は増進し、栄養補給や健康の回復になります。生姜や酸梅、麦芽、みかんの皮、玉ねぎ、ニンニクなどは胃腸健康にする食物といわれています。
3.精神の管理
病気の期間が長く、予後が不良だと患者は悲観的となり、失望や焦慮、気をもむ、憂慮するなどの感情が生まれるのは回復に悪影響があります。病状を理解し、明確な診断を下し、包括的な治療と適切な計画を説明する必要があります。医者は誠実で、人情深く、個々の患者に適した治療法、融通が利く治療法を選び、※七情の間を相互に制約する関係を患者自身の病態心理の中で治療するのです。素問の“移精変気論”と暗示療法は患者の感情や意思、及びこの疾病に対する不安発生に対し、病痛と心理の悪循環を断ち切ります。
※七情:喜・怒・憂・思・悲・恐・驚の7つの感情
4.病状に合った処理、管理
(1)手術の難易度を否定することなく、病状を詳細に説明し、手術の効果についても説明し、患者に信頼してもらいます。術後に想定されるあらゆる可能性を説明し、家族の心の準備を整えられるよう努めます。患者には手術中、協力を求めます。
(2)術後、切り口の出血や感染の兆候を観察します。
(3)針刀治療と手技治療後、頚周囲を固定し、後頭部が沈まないようにして頭部を中立位に保持し、それを1週間続けます。ダンボールや気泡プラスチック、石膏で簡易的カラーを生成し、局部を制動し、頚部を支えることも可能です。
(4)術後1カ月は頚部の運動療法を行います。疼痛が軽減してきたら徐々に各方向へ動かし、筋力を増強します。運動と休憩をバランスよく行います。
(5)普段注意しなければならないのは、臥位の姿勢と枕の高さです。背臥位で枕が高すぎないようにして、側臥位ではやや高くても良いですが、頚部と体幹が一直線になるようにして、片側に偏らないようにします。
5.健康教育
健康に関する知識を幅広く伝え、患者に頚椎症に関する知識を理解してもらい、疾病予防意識を高め、治療に対する自信を高め、回復する方法を身に着けてもらいます。普段、正しい姿勢で。長時間机に向かう勤労者、特に慢性労作性損傷の人は、頚部を多くの方向へ動かすことを勧めます。正しく頚部のリハビリテーションを指導し、冷えや湿度の刺激を避ければ、様々な誘引や合併症の発生も防げます。身体運動を強化し、合理的に理学療法やあん摩、薬物などの総合的治療を行うと、苦痛から解放され、日常生活能力も向上するのです。
参考文献:无绪平 张天民,针刀医学临床研究,中国中医药出版社:2011.p71-92